テーブルA報告 テーブル進行役 田川陽子
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発表する 田川さん
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当日の進行全般
テーブルAは、覚園寺、瑞泉寺、荏柄天神など、世界遺産登録候補地が散在する二階堂辺をテーマとしました。
参加者は4名で、うち女性3名、男性1名、また鎌倉市民3名で、市外からの参加者1名で、ワークショップに初参加は3名でした。
参加の動機は、「鎌倉に住んでいながら(鎌倉に住んでいないので)鎌倉についてよく知らない」、あるいは「世界遺産登録についてもどうなっているのかよくわからない」ので、「もっとよく知りたい」とのことでした。
前半は史跡の特徴を挙げてもらいましたが、史跡そのものについてよりも、この地域全般についての意見が多くあげられました。どの季節でも花が楽しめ、歩くと気持ちのいい場所でありながら、交通が不便、(駅から遠い、夜になると怖い)、道が狭い、休日の混雑、蛇や虫の害、台湾リスの被害などに話題が集まりました。
後半は前半で出た課題をどう解決するかがテーマでしたが、コメンテーターの伊達さんの「見えるもの、見えないもの」との発言にヒントを得て、前半での意見を「見えるもの」と「見えないもの」に分け、「見えないものを見えるようにする」という、課題解決の方向性を探ることができました。
[見えるもの]と[見えないもの]
[見えるもの]
見えるものとして挙げられたのが、「歩くと気持ちのいい、緑の多い、雰囲気のある小道」ですが、一方で、道幅が狭く、休日の混雑はかなりなもので、「住民が車を出すのは気がひける。」など、いわば観光被害と言えるような意見もいくつか出されました。
この解決策としては、徒歩での観光を進め、パーク&ライド、貸し自転車、小型バスをもっと利用するという意見が出されました。又、観光客だけのための施設整備は景観、遺跡保存の観点からできないが、観光客を気持ちよく受けいれるには今の施設では限界か、という意見もありました。
[見えないもの]
見えないものとしては、総括進行役の福澤さんの言われた、「レイヤー」ということでしょうか。
覚園寺に種々の古文書があるとか、永福寺跡が発掘されたが、「発掘の成果」がわかりにくいなどの意見が出されました。
野村総研跡地に博物館構想があるらしいが未定なこと、鎌倉市民が発掘や歴史について知りたいときにどうすればよいか、今ひとつ見えてこない、又、そのような施設として、国宝館があるが、その利用率が低いのは単に宣伝の問題だけでなく、もともと興味がないのではないかという指摘もなされました。
「見えないもの」を見えるようにする
鎌倉を訪れる観光客、そして鎌倉市民の大多数は実は鎌倉についてあまりよく知らないのではないだろうか。
一方で鎌倉について大変詳しい市民も多数おられ、史跡などで進んで説明してくれる人もいるようです。鎌倉検定の1級を取得するのは随分大変なようですが、取得された方々にガイドをしてもらう、鎌倉検定を主催する商工会議所や旅行社ともタイアップしてのシステム化というアイデアが提案されました。
永福寺跡地については今は単に草地となっているので、草刈十字軍などを実施している風致保存会や小学校の総合学習などで草刈りをし、単に整備するだけでなく、永福寺について知る機会としたらとの提案もありました。
観光客や修学旅行で訪れる生徒たちだけでなく、市民も楽しんで学習できるような場あるいは施設が求められている、つまり「見えないレイヤー」を見えるようにすることが求められているとの指摘もなされました。
ワークショップを終えて
今回のワークショップのテーマは世界遺産候補地のよい点悪い点を洗い出し、それを課題として、市民がそれらの課題にどう取り組むか、ということだと思いますが、私自身の進行役としての力不足もあり、議論は少しはなれたところで展開しました。参加者の参加動機は冒頭で述べたように、「鎌倉をもっと知りたい」と言うことです。これはたぶん鎌倉を訪れる観光客、そして鎌倉市民の大多数が感じていることのように思いました。そして今回の参加者は「もっと知りたい」とそこから一歩踏み出した人たちなのです。
福澤さんの言われた「レイヤーを磨く」ことはもちろん重要なことですが、レイヤーの存在を広く知ってもらうようにすることも重要なことだと思います。今、私たちが歩いている足元にいくつかのレイヤーが積み重なっていることに気づき、実際に歩いて、感じてもらおう。
そのためのきっかけ作りや、知りたいと一歩踏み出した人たちが緩やかにつながり、ネットワークを広げ、さらに先へ進んでいく。こうした市民のネットワークを広く深く作り上げていくことが、世界遺産登録への回り道のようで案外近道なのかも、と感じました。
話し合い中のテーブルA
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源頼朝墓(法華堂跡)への階段を見る
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荏柄天神参道から社を見る
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