テーブルD報告 テーブル進行役 横川 啓
1.参加者の顔ぶれ
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発表をする横川さん
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Dテーブルの参加者は他のグループに比べ、比較的若かったかと思います。それぞれ鎌倉には思い入れを持っていて、世界遺産登録については賛成という人ばかりではありませんでした。全体の趣旨からはちょっと外れてしまいましたが、議論を重ねる内に参加者が納得できる結論に導かれました。下は参加者の自己紹介からの抜粋です。
・Mさん 鎌倉で地域のフリーペーパーを発行している小町在住の大学生。鎌倉を知らせたい良くしたいという思いと現実(地域の重要人物)とのギャップに問題意識を持っている。
・Oさん 岐れ道付近でお店をやっている。鎌倉在住10年で、世界遺産登録には積み重ねが大切であり、生活の延長としての世界遺産であるべきという問題意識を持っている。
・Tさん 材木座に移り住んで5年。観光に訪れる 若人が増えていて、みどり(自然)とおしゃれの2つの面が若者受けがいい要素と考えている。世界遺産はまちづくりのテコとして期待している。
・Uさん 鎌倉在住5年。現状の世界遺産登録には?と感じている。普段はゴミ・ゼロなど環境問題を中心に活動しており、市は担当課だけでなく、市の全部の課で世界遺産登録にふさわしい施策を行うべきとの問題意識を持っている。
・進行役の私 手広在住10年。市の下水道課の職員。市公募の100人会議で福澤さんと出会い、そのつながりで第1回のワークショップから進行役を仰せつかる。正直に言うと、この取組に参加してやっと世界遺産について考えることになった。
2.中間報告
今回のテーマである「どう守る 私たちの世界遺産」のうち、扇ガ谷辺(浄光明寺、寿福寺、亀ヶ谷坂、仮粧坂)について議論を始めましたが、なかなか焦点が絞れず、それぞれの問題意識の延長線から議論がはずんでいきました。そのなかで4つのキーワードが出てきました。
一つ目は『世界遺産とまちづくり』・・・「どう守るかと問われてもピンとこない」、「史跡が好きと言うよりは景色がすき」、「ゴミ箱や自販機があふれていてこれでいいのか」、「史跡を守るのか“まち”を守るのか」という議論の中から、いま残したい“景色”があり、良くしたい“まち”があるという視点が見えてきました。
二つ目は『世界遺産と学び』・・・市外から移り住んだ人(新住民)の多くは、まちや景色に歴史があることを“ちゃんと学んでいない”ということに気づきました。お気に入りの“景色”に“歴史”が加味されたら、もっとその場所を好きになることでしょう。好きになれば守ることに本気になれるはずです。市民にとっては史跡もまちの一部です。近隣の人が史跡について学ぶ機会がたくさんあれば、もっとファンが増えるのではないでしょうか。
三つ目は『世界遺産と市の仕事』・・・一つ目での話題になったゴミや景観、自動販売機など、「これでほんとうに世界遺産登録に立候補しているまちなの」、「普通のまちになっている」という問題意識を持っている人も多いようです。これらは環境や景観などの課題ですが、それだけではなく、市役所全体として世界遺産登録をめざす方向で進んでいけば、もっとパワーが生まれるのではないでしょうか。また、やぐらが放置されているなども話題となりました。
四つ目は『生活の延長線上にある世界遺産』・・・ このようにいろいろ考えていくと世界遺産は私たちの生活の延長線上にあって、その歴史と守ってきた市民文化(市民同士の連携、共同)を知ることによって、また市民同士が横につながることによって“自覚的に守る”意識につながるのではないでしょうか。
3.まとめ
最後に、これらのキーワードをふまえ、ハードとソフトの両面で、世界遺産にふさわしいまちづくりや史跡の保護が考えられるか、みんなでアイデアを出してみました。特に、楽しみながら取り組めるものを考えてみました。
アイデア
●お寺の住職によるその寺やその付近の歴史学習会…お寺の住職が先生になり、近隣の人の学びの場の創設とファンを増やす取り組みを行ってもらう。
●鎌倉の全市をめぐる世界遺産双六(すごろく) ・・・ すでに参加者のOさんが作成中。完成したら、子どもたちと一緒に大人にも楽しんでもらいたい。
●鎌倉博物館の建設・・・鎌倉学習の入り口として、埋蔵物の展示や中世史が勉強できる博物館がほしい。
●フィールドミュージアム・・・博物館とは対局に、ハードではなく地域に分散した、地域全体が博物館という発想で整備したらどうか。
●宿泊施設の誘致・・・泊まっていただくことでより深く鎌倉を知り関わってもらう。
●エコツーリズム宣言・・・「環境・文化に対する理解、感謝の念・心を持つ」を大切にし、文化や自然、生活、歴史、地形などをキーワードにした観光を進める。
おわりに
自分が住みたいと思うだけではなく、地域の人とのつながりができたとき、地域を知り地域を愛することにつながっていく。その上で、お客様(観光客)を迎えるという意識が芽生えてくる。この意識がなければ世界遺産を継続していくことはできないのではないでしょうか。