鎌倉世界遺産登録推進協議会
  トップページ > 武家の古都・鎌倉ニュース >鎌倉ニュース第26号 

武家の古都・鎌倉ニュース第26号  冬号/Winter 2013

 
◆世界遺産条約採択40周年記念 最終会合開催報告◆
「武家の古都・鎌倉」未来への課題

 平成24年11月6日から8日まで、ユネスコの世界遺産条約採択40周年記念最終会合が、 日本政府主催・ユネスコ世界遺産センター協力により、国立京都国際会館で開催されました。
 開催準備・運営にあたった文化庁世界文化遺産室長の小林万里子さんに、大会で発表された京都ビジョンの内容について聞きました。


持続可能な地球と世界遺産
 昨年11月に再び世界遺産委員国に選出された日本は、世界遺産条約への関与の一環として大会を開催し、 議論をまとめて京都ビジョンを発表しました。これは大会の成果文書で、「持続可能な地球と世界遺産の役割」と 「コミュニティーの役割の重要性」を軸にしたものです。ユネスコには途上国が多く、 開発と対立するように思われがちの世界遺産自体も世界の持続的発展に貢献するものとして 位置付けるべきだといった議論もなされました。

登録の可否が決まるまでの鎌倉の役割
 基本的に、大きな意味での保全の取り組みは、これからもずっと続けなければいけないことです。 ただ具体的な取り組みとしては例えば、世界遺産の推薦に合わせて動きが出ているガイダンス施設整備の課題などは 登録までに着実に進めていく必要があるかと思います。

鎌倉の課題
 文化遺産行政をささえていくような埋蔵文化財調査・研究のための鎌倉市の体制をさらに強化した方がいいという声は、 専門家の先生方からも出ています。鎌倉には、いろいろ重要なものがあり、専門家も含めた周囲からの関心も強い分、 行政の制約がある中でも、十分な取り組みが期待されます。

同時開催
市民団体主催による
【世界遺産条約40周年及び日本の批准20周年記念シンポジウム】
会場で説明する神奈川県教育委員会
世界遺産登録推進グループリーダー桝渕規彰さん。
会場で説明する神奈川県教育委員会
世界遺産登録推進グループリーダー桝渕規彰さん。

 日本政府主催の最終会合にあわせて、40周年記念と日本の条約批准20周年を記念した市民シンポジウムが、 同じく京都市内で開催されました。

 主催の「市民シンポジウム実行委員会」は、三都市民共同フォーラムが 全国の景観保全や世界遺産登録に取り組んでいる団体に呼びかけて結成されたもので、会合には全国から約120名が参加しました。

 開会にあたり、片方信也実行委員長は、保全に市民が主体的に関わる意義と大切さを訴え、 ユネスコの最終会合に向けてアピールするとともに、来年登録の可否が決まる鎌倉を支援しました。

 シンポジウムでは、埋め立て架橋計画見直しの運動を成功させた鞆の浦、登録延期を経験をした平泉、 登録可否を来年に控えた鎌倉からそれぞれの取り組みが報告されました。また奈良、京都からは 登録資産の保全管理問題についての報告がありました。

 鎌倉からは12名が参加し、推進協議会の卯月文さんは「鎌倉の登録準備報告を聞いた会場の参加者から、 『武家の古都』という意味が容易に理解できなかったが説明を聞いてほぼ納得したと声をかけられ、 まずは安堵しました」と報告を寄せてくれました。
 

◆3館連携特別展「武家の古都・鎌倉」関連シンポジウム 基調講演◆
五味文彦さん講演「武家の古都・鎌倉とは何か」

  平成24年11月11日(日)、きらら鎌倉(鎌倉生涯学習センター)ホールで、県立歴史博物館・県立金沢文庫・鎌倉国宝館で開催中だった 世界遺産登録推進特別展の関連シンポジウムが開催され、五味文彦さん(放送大学教授・東京大学名誉教授)と清水眞澄さん (三井記念美術館館長・成城大学前学長)の基調講演と3館の館長を加えたシンポジウムが行われました。
 今号では五味文彦さんの講演要旨を記します。


五味文彦さん基調講演要旨
鎌倉の世界遺産への足取り
 昭和60年(1985)に鎌倉駅西側の御成小学校の建て替えに絡んで今小路西遺跡が発掘され、鎌倉の古代の風景、 武家屋敷跡が良好な形で残っていたことがわかり、鎌倉の考古学的発掘の重要性が広く認識されるようになる。 網野善彦・石井進・大三輪龍彦の三氏を代表とする中世都市研究会が誕生し、中世都市研究が進んだ。

 平成4年には「古都鎌倉の寺院・神社ほか」が世界遺産の暫定リストに掲載され、ユネスコ世界遺産センターに提出された。 しかしながらその後は何度か推薦の機会がありながら、見送られていく。推薦が遅れる間に段々と世界遺産登録に関するハードルが高くなり、 他地域との比較研究で、これまでの登録遺産と同じような価値ではなく、独自の価値を明確にしなければならなくなった。

武家の古都・鎌倉のコンセプト完成
 平成13年に鎌倉市歴史遺産検討委員会が発足し、私はその委員長となった。改めて世界遺産を検討し、 総合的に鎌倉の特質を考えるということから「武家の古都・鎌倉」というコンセプトを平成16年に固めた。 その後国際会議を経て本年1月に正式な推薦書を提出し、9月にはイコモスの調査が行われた。 主に保存管理についての調査だったが、その報告とコンセプトに基づく評価勧告がイコモスから世界遺産委員会にされ、 来年6月には決定する。

問題点
 鎌倉では都市の遺跡に関わる発掘保存の体制が きっちりしていない。ほとんどが記録保存で、遺構は廃棄されており、発掘された木材も残されていない。1点1点の遺物がゴミになってしまう。 評価できないまま捨ててしまうことは大きな問題である。しかしながらこの点は、鎌倉の博物館や埋蔵文化財センターの構想によりながら、 着実に進みつつある。

 『武家の古都』なのに御所が入っていないというのも大きな問題だった。大倉幕府、若宮大路幕府など、幕府の跡がひとつも入っていない。 これについては「中世の御所は簡便に造るので残っていない。そのかわり神社仏閣は整えている」と言い訳しているが、 これからは大倉御所跡を国の史跡にするなどその性格をきちんと考えていかなくてはならない。

 世界遺産になるとさらに多くの観光客が来るのではと心配する声がある。確かに今のままでは観光の波だけが押し寄せてきてしまう。 たとえば、鎌倉に一泊して、朝の空気を吸って、古都の風情を感じるという場所がない。 これまでと違って世界遺産のコンセプトを世界に発信できる観光の体制が必要だ。

古文献に見る「鎌倉」と、今後の課題
 鎌倉の世界遺産で非常に重要なのは『吾妻鏡』という歴史書があることだ。平泉の登録の際も、『吾妻鏡』に記述されていることが重要視された。

 『吾妻鏡』文治二年(1186)八月十五日条では、西行が鶴岡八幡の鳥居の辺りにいると聞いた頼朝が、西行を招いて話をすることが書かれている。 建暦元年(1211)十月十三日条では、鴨長明が三代将軍実朝に会いにきて、頼朝法華堂に行き読経し、一首の和歌を詠み柱に残したことが書かれている。 ここからわかるのは、鎌倉は実朝の時代には京都の文化を積極的に入れていることだ。

 北条泰時の時代になると、『海道記』と『東関紀行』にも鎌倉の繁栄ぶりが書かれている。

 その次の段階は建長寺や円覚寺が造られるなど、京都を超えて大陸文化、特に禅宗を積極的に取り入れる時期だ。 そういうところにやってきたのは京都の後深草院二条で、『とはずがたり』を著した。繁栄する鎌倉を女性の目で見ている。 吉田兼好の『徒然草』には、鎌倉の繁栄に対し批判的な眼がある。それだけ鎌倉は独自の成長を遂げたといってよい。

 鎌倉では、基本的には700年にわたる武家政権の基礎となる「さむらいのスピリット」というものが育てられてきた。 また一方では「死」という問題もある。今後は負の遺産も直視し、いいところを把握して考えていくことが必要になるだろう。
 

『武家の古都・鎌倉』の世界遺産登録をめざす
神奈川県・横浜市・逗子市の取り組み 横浜市・朝夷奈切通と称名寺
横浜市教育委員会生涯学習文化財課文化財係 佐藤 孝さん

『武家の古都・鎌倉』の範囲は、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』に、 北は山内(北鎌倉)、東は六浦(横浜市)、西は片瀬川(藤沢市)、 南は小坪(逗子市)と書かれています。
 世界遺産登録では、そのうち横浜市金沢区の称名寺と鎌倉市との 境にある朝夷奈切通、鎌倉市と逗子市の境にある名越切通や 和賀江嶋が含まれる区域を構成資産としています。

 このため、神奈川県と横浜市・逗子市も早くから、鎌倉市と同様に 遺産の研究・保存管理の努力を続け、大きな成果を挙げています。
  鎌倉市とともに『武家の古都・鎌倉』の世界遺産登録を推進している 神奈川県・横浜市・逗子市の行政と市民活動の取り組みについて お伝えするコーナーです。
 第2回目は横浜市の行政の取り組みについて、横浜市教育委員会の 佐藤孝さんに伺いました。

----------------------------------
 「武家の古都・鎌倉」の鎌倉エリアから一つだけ離れたところに 「称名寺」があります。

 この称名寺が所在する横浜市金沢区は、かつて鎌倉の東の境界に位置し、 鎌倉の経済や防衛を支える要衝の地でした。 当時、六浦津(むつらのつ)と呼ばれた天然の良港があり、房総や東国との窓口となり、 後には中国大陸との貿易港として賑わいました。

 朝夷奈切通は、 鎌倉と六浦津を結ぶ幹線道路として鎌倉幕府が開削しました。 この道路(六浦大道)の大部分は環状4号線に変貌してしまいましたが、 沿道の町名や小中学校、バス停などに「大道」の名称を残しています。

 鎌倉から東に向かい、朝夷奈切通を越えて六浦大道を進むと、 南側には岬に囲まれた六浦津が広がり、瀬戸神社から瀬戸橋を 渡って北上すれば、入江を臨む台地の中腹に金沢北条氏の居館と称名寺が構えられていました。  
横浜市教育委員会作成のリーフレット(表)
横浜市教育委員会作成のリーフレット(表)


 朝夷奈切通は、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』の仁治元年(1240)11月30日に 鎌倉と六浦津の間に初めて道路を作ることが決定され、時の執権北条泰時が みずから現場に赴いたと記録されています。工事は翌年4月に着手されましたが、 土石が崩落して道路が埋まるたび修復が行われたようです。

 その後も、江戸時代を通じて麓の住民の手で道路改修が続けられ、 切通沿いに道(坂)普請の供養塔が残っています。

 大切通から少し下って 三叉路を右に進むと、鎌倉鎮護のため勧請されたと伝えられる熊野神社があります。 神社は江戸時代に再建され、峠村(現、朝比奈町)の村民により社殿と 祭事が維持され今日に至っています。切通は神社に至る参道の一部でもあり、 江戸時代から続く氏子18戸により、切通路や境内の除草や清掃などが 現在まで定期的に続けられています。

 文化財(史跡)は、貴重な国民的財産として保存管理し、 また安全に公開することが必要です。朝夷奈切通は山腹を貫く山道で、 落石や倒木が生ずるたびに、地権者等にお願いしながら処理してきましたが、 教育委員会では昨年度から史跡整備検討会を組織して崖面の崩落防止に 係る調査を行い、今後対策工事の実施や樹木管理、路面整備などを 図っていくことにしています。

 一方、称名寺は、大正11年(1922)に「称名寺内界」が史跡に指定され、 翌年に神奈川県久良岐郡金沢村が管理団体に指定されました。 江戸時代に金堂や仁王門、釈迦堂などが再建されたものの、寺勢は衰退し、 大正初期の写真には裏山は茅場、境内は一面水田となっており、 史跡としての維持管理には自治体の指定が必要であったと思われます。

 昭和53年から62年にかけて本格的な発掘整備事業が実施され、 苑池と平橋・反橋の復元整備が行われました。その後、橋の腐朽が 進んだため、世界遺産登録準備事業のなかで両橋が架け替えられました。

 現在は境内の日常的管理を称名寺愛護会に委託し、 またNPO法人横濱金澤シティガイド協会は土・日曜日に境内の案内を 行っています。

 教育委員会では、地元住民や団体と連携し、 山稜に抱かれ閑静な住宅地の中の寺院環境を守りながら 称名寺の保存管理を図り、案内・説明板の設置やパンフレットの 発行などにより一層の公開活用に努めていきたいと思っています。


 

鎌倉塾シンボルマーク
 平成24年度 春季講座 第2回要旨
『鎌倉の禅宗彫刻』
講師: 浅見 龍介さん(東京国立博物館東洋室長)
とき: 平成24年5月20日(日) ところ:鎌倉芸術館

◎鎌倉の禅の広がりと中国文化
  従来禅宗寺院に仏像はあまりないと考えられていたが、現在、鎌倉市内にある 国宝・重要文化財40件の仏教彫刻のうち、三分の一以上は禅宗寺院にあり、 そのほとんどが鎌倉時代から南北朝時代に造られたものである。 このように禅宗寺院が仏像を必要としていなかったということはまったくない。 よく知られているように、鎌倉の禅宗寺院というのは、中国の禅宗寺院の 影響を非常に強く受けている。ところがその仏像については、これまであまり 検討されてこなかった。

 1180年に源頼朝が鎌倉に入って後、特に三代将軍実朝の頃に顕著だが、 鎌倉には京都の文化が導入される。それが承久の乱を経て五代執権北条時頼の 時代になると、1253年の建長寺創建に代表されるように、中国文化の影響が 強く見られるようになる。文化が変わる時には強いリーダーシップが働くことがあり、 この鎌倉における文化の転換にも、時頼の意思が強く働いているのではないかと思う。

 時頼の息子の時宗は、中国五山から無学祖元を招いて円覚寺を創建し、建長・円覚両寺を 拠点に禅宗が深く根付いていく。中国風を取り入れ鎌倉に根付いた禅は京都にも定着し、 五山制度の確立により急速に全国に広がっていく。

 鎌倉五山には、特に鎌倉から南北朝時代にかけて、多くの中国からの渡来僧がいた。 また、中国へ留学をする僧も大変多かった。このため中国文化が非常な勢いで 鎌倉に浸透し、禅宗彫刻にもその影響が強く及んでいる。

◎禅宗彫刻に見られる中国文化の影響
 建長寺仏殿の地蔵菩薩像は創建当時のものではなく、15世紀前半の室町時代の作と思われる。 円覚寺本尊は頭部のみ鎌倉時代、寿福寺本尊は室町時代前期、浄智寺本尊も南北朝時代頃の作である。 京都五山の仏像が度重なる火災に遭い、近世以降のものが多いのに対し、鎌倉五山の本尊は少なくとも 室町時代に安置したもの、あるいはそれ以前の像がそのまま残っている点で、大変貴重である。

 造形は当時の中国で造られた像とよく似ており、抑揚に乏しくあまり写実的でない。 鎌倉時代中ごろまでは運慶・快慶に代表される現実感あふれる作風が流行したが、後期から 南北朝時代にはこのような中国で流行った最新モードが好まれた。

 建長寺の伽藍神像もやはり中国的色彩が強い。伽藍神は、中国の禅宗寺院で伽藍の守護神として 道教の神をまつったもので、建長寺をはじめとする日本の禅宗寺院にも取り入れられた。 現在、中国でも古い伽藍神像は残っていないため、建長寺の伽藍神像はおそらく世界最古の 藍神像であり、中世の道教の神像がこれだけまとまっている例も他に見られない。

 建長寺に伝わる「宝冠釈迦三尊像」は、作風から中国で描かれた画像であることがわかる。 向かって右が文殊菩薩、左が普賢菩薩で、中央は普通釈迦如来なのであるが、実はここに 描かれているのは毘盧遮那仏である。

 中国では、毘盧遮那仏が禅宗寺院の本尊として まつられることが多い。なぜかというと、禅宗は基本的には坐禅、臨済宗の場合は公案も重視するが、 その理論的な部分が『華厳経』に似ているからである。円覚寺本尊も毘盧遮那仏であることは 開山無学祖元の詩文をまとめた『仏光国師語録』に記されている。

 しかし、南北朝時代の記録には 円覚寺本尊を、「華厳の釈迦」あるいは「宝冠の釈迦」と記している。その後、本来は毘盧遮那仏で あるものが、宝冠をつけた釈迦如来として、全国的に造られるようになった。

 東慶寺の水月観音像は、最近の調査の成果から、鎌倉時代13世紀後半の作と考えている。 この像で注目したいのは、髻(もとどり)を布で包んで紐で結ぶ表現や、くつろいだ姿で 坐っていることで、いずれも中国の影響によるものである。建長寺に伝わる「白衣観音像」は 中国で描かれたくつろいだ姿勢の観音像の作例である。このような姿は当時の中国で大流行 したにもかかわらず、日本では鎌倉にしか見られない点が重要である。

 浄智寺の韋駄天像は二つの大きな特色がある。一つは瞳に黒い石を嵌めていること、 もう一つは鎧の毘沙門亀甲と呼ばれる文様が、土で作られた土紋であること。 いずれも中国から来た技法で、特に土紋は鎌倉でしか見られないものである。

◎世界に誇る鎌倉の禅宗彫刻
 円覚寺の無学祖元坐像の迫真の描写は、運慶作の仏像にも引けを取らない造形の力があり 世界に誇れる彫像である。建長寺の蘭渓道隆坐像も向き合うと反省を迫られるような迫力がある。 京都五山などにも禅僧の肖像彫刻は多く残っているが、これほど見るものに迫ってくるような 表現ではない。これらは礼拝する修行僧に語りかける、あるいは厳しく追求してくるような 存在であり、記念に作られた他宗派の肖像彫刻とは性格が異なる。

 室町時代以降も京都の禅僧であっても、鎌倉で修行することが重要であった。 彼らが京都だけでなく、地方の寺院にも住むことによって、鎌倉の禅が日本各地に広がっていった。

 南宋から元時代に発展した中国の禅文化をかなり生な形で輸入した鎌倉の禅文化は、 源流の中国ではほとんど失われていることからも、とても貴重な存在である。
 


◆めざそう世界遺産 武家の古都・鎌倉◆
フランス語スピーチコンテスト 開催

 平成24年10月28日(日)、鎌倉女学院睦奥ホールで、鎌倉世界遺産登録推進委員会主催、 鎌倉市共催によるフランス語スピーチコンテストが催されました。ユネスコ本部がパリに 在ることもあって、鎌倉の魅力をフランス語圏の人々に発信しようという趣旨で行われた コンテストです。
 後援に在日フランス大使館、(公財)日仏会館等が名を連ね、国際色豊かな 催しになりました。応募者22名から選考された、21歳以上のA区分、20歳以下のB区分それぞれ5名の 計10名によって競われました。1人当たり7分程度のスピーチでしたが、いずれの鎌倉の魅力が 豊かに盛り込まれていました。
 会場には若い女性の姿も多く坂麗水さんによる薩摩琵琶、『遠干潟』(新田義貞の干潟渡り)の 演奏もあって華やいだ雰囲気の催しとなりました。


審査員---------------------------------
  • フランシス・メジェールさん  (在日フランス大使館文化部次席参事官)
  • リシャール・コラスさん  (鎌倉国際観光親善大使・シャネル日本法人社長)
  • 池村俊郎さん  (元読売新聞パリ支局長・日仏会館文化事業委員)
---------------------------------------
◎発表者の発言から
 A区分・最優秀賞の神田栄子さんは、ディジョン大学に2年間在学した経験があり、 現在外国人向けのボランティアガイドで活躍している。
 ガイドの眼を通して捉えられた多彩な鎌倉の社寺などの文化や歴史と 自然の魅力を取り上げ、6月から始めたフリーガイドサービスという活動を紹介した。 毎週金曜、仲間のボランティアが鎌倉駅前で、プラカードを持って外国人観光客を 迎える活動とのこと。

 B区分・最優秀賞の保科早紀さんは大学1年生で、4月に名古屋から越してきたが、 フランス語で古都鎌倉の価値ある文化を紹介したい意思を持つ。日仏学生フォーラムの メンバーとして、この8月に招待されたフランスの学生を案内して鎌倉をめぐった体験を語った。 フランスの学生が社寺や花火・畳・大風呂など鎌倉の様々な文化に接したときの新鮮な驚きを 通して鎌倉の魅力をユーモアを交えながら生き生きと表現した。

 以下、会場の共感を呼んだその他のいくつかのスピーチを取りあげる。
 梅澤寿美代さんは、鎌倉の良さを、寺社を中心にした古都鎌倉と海と太陽が自由な気持ちにしてくれる明るい街と いう2つの顔があることから説明、2年前に鎌倉に越してきた坂本詩穂子さんは、 鎌倉の市民が閉鎖的ではなく、新しい住民を快く受け入れてくれる理由を、ともに 鎌倉の伝統を守ろうという意識の共通性に求める。

 そして、人も自然も歴史もすべてつながり、自然に存在し、互いに影響し合っていると述べた中学3年の山下真理子さん、 3ヶ月ほど過ごしたベルギーの学校でフランス語に出会った経験を語り、友達に鎌倉を紹介したいと 元気よく主張して、この日にわかに設けられた審査員特別賞となった9歳の木戸裕実さん、 さらに、武家らしい力強い鎌倉の仏教彫刻の流れが今日の鎌倉彫刻に流れていることに 言及する大学2年の菊池憧子さんなどのスピーチが印象的だった。

 
B区分・最優秀賞の保科早紀さん
B区分・最優秀賞の保科早紀さん
◎審査員の講評から
 AB区分別に最優秀賞・優秀賞・第三位賞および奨励賞など発表者全員に賞が授与された。
 審査員のメジェールさんが、開口一番、素晴らしい午後であった、選ぶのが大変で あったと言ったのは、レベルの高さの指摘である。
 コラスさんは、正しいフランス語であるか、 発音が正しく、聞き取れるか、新しい表現が取り入れられているか、ポーズや微笑みなど 聴衆に訴えかけるものなどを選考基準においたが、全員魅力的で、愛情をこめてほとんど 原稿を読まないでスピーチしていたと評する。
 池村さんは、賞とは関係なく発表者を名指しで取り上げ、魅力的な話し方、 笑顔の素晴らしさ、初々しさを挙げて評価した。
 また、フランス語圏は広く、フランス語で話すと世界が広がる、フランスの一番の財産は フランス語の中にあるという、講評に付随した発言は、この日のコンテストの意義を 深めるものとして注目された。
 

◆武家の古都 鎌倉・市民の会連続シンポジウム22◆
女性円卓会議「日々のくらしと鎌倉の世界遺産」

 平成24年10月21日(日)、建長寺・応供堂で、鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会主催・ 推進協議会共催のシンポジウムが開かれました。
 鎌倉で活躍する7人の女性たちの円卓会議という趣向で、阿曾千代子さん、 アルバレス湊万智子さん、卯月文さん、島津克代子さん、高木治恵さん、牧田知江子さん、 山村みや子さんが参加し、司会・進行は鎌倉FMキャスターの能登原秀実さんが務めました。(順不同)
女性円卓会議の様子  女性らしい現実感覚を通して、鎌倉の過去から未来に亘る様々な見識が交わされ、 終始なごやかさと笑いに包まれた会議でしたが、いかにも禅宗らしい簡素で重厚な 応供堂の雰囲気と不思議に調和していました。以下、概要を記します。


○牧田さんによる問題提起
 人も自然も町も変化していくもので、鎌倉の町がより魅力的に変化するために、 なにが必要なのか、次世代に鎌倉のどんな姿を引き継ぐべきか。

○出席者の自己紹介と提言
 「常盤道普請の会」の山村さんは、常盤山の活用などを考え、史跡を含めた地域の未来を 市と協働して進めなければならないという。

  鎌倉の文化活動の拠点をめざす「北鎌倉たからの庭」を主宰する島津さんは、鎌倉には 他の地域にはない空気感があって、それがキリスト教や仏教という宗派や宗門を超えて 行われた慰霊・復興の祈願を成り立たせており、そうした文化が鎌倉を造っているという。

牧田さんは鎌倉市民の文化という意識で「井上蒲鉾店」を経営しているが、ビジネスを 鎌倉の景観や文化とのつながりの中で考えることにより、住むにふさわしく訪れてよい 鎌倉にしたいと述べる。

 写真家で鎌倉の景観を研究する高木さんは、 鐘の音や潮の香りまで含めて景観を深く捉えているが、景観を護ることや、武家の精神を 説明することの難しさを指摘する。

 若い芸術家などの協力を得て「カフェ鎌倉美学」を立ち上げたアルバレス湊さんは、 そこを芸術家たちや、鎌倉を愛して訪ねてくる人と地元の人との交流の場として 発展させることをめざすと述べる。

 「図書館とともだち・鎌倉」の阿曾さんは、ユネスコの図書館宣言の精神を取り上げ、 公共図書館の重要性を主張、図書館を支えるヒト・モノ・カネの3要素の内、決め手に なるのはヒトであり、弱い立場の人のセーフティネットとしての図書館であるべきだと述べる。

 長年世界遺産に関わる活動をしてきた卯月さんは、世界遺産の目的は、鎌倉の市民憲章の 具現化以外のなにものでもなく、それと世界遺産条約の前文をすり合わせた時、平和の問題が 浮上、戦争などの破壊から文化遺産を守ることこそ市民憲章に合致するという。

○意見交換
鎌倉の何をひき継いでいくべきか
 鎌倉の景観は市民運動によって築かれてきた。その積み重なりが世界遺産に他ならない。 そうした市民の精神を表した市民憲章を語り合う機会があってもよい(卯月)。

宿泊施設について
 鎌倉は宿泊施設が少ない、特に外国人をゆっくり滞在させたい(島津)。寺に宿泊させる 方法があるのではないか(卯月)。深沢地区にホテルを誘致してはどうか(山村)。 古民家を外国人の宿泊や文化の交流に使うのも、鎌倉らしくしていく方法となるのではないか(牧田)。

開発と保全
 ビジネスプランを提供することで再開発を防ぐことが可能、余った部屋を宿泊などに 使用すれば、所有者は転居しなくて鎌倉に住み続けることができる、市が窓口となって 家や離れなどを提供する人を募る方法もある(アルバレス湊)。

 深沢・大船地区に宿泊施設をつくるなど、バッファゾーンから抜けているところを開発して、 若い人たちの雇用を生み出してはどうか(高木)。
 アーティストの活動や工芸、芸術が集うのも鎌倉の特質(牧田)。

 白川郷では地域の文化を若者が作り上げている。 かならずしも開発がよいのではなく、若者の生活の問題は、古来の文化を引き継ぐ中で 解決すべきで、そうした誇りある宿題を残すのがポイントである(卯月)。

まとめ
 11月上旬に京都で世界遺産条約40周年集会がある。テーマは (持続可能な発展・地域社会の役割)であり、本日話し合ったことはまさにそれであると思う(卯月)。

 
めざせ世界遺産登録  あなたも参加団体で活動しませんか?

   「かまくら学」研究に取り組む
■----------------------------------------------■
   神奈川県立鎌倉高等学校

鎌倉まつり講演会での発表風景
鎌倉まつり講演会での発表風景
 県立鎌倉高等学校は、昭和3年に鎌倉町立鎌倉実科高等女学校として創立されて以来、 現在にいたるまで80年以上の歴史を持つ伝統校です。また、校内から相模湾が一望でき、 晴れた日には伊豆大島や富士山が見える、美しい景色に恵まれています。

 平成19年度より、武家の古都・鎌倉の世界遺産登録に向けた活動に何らかの形で協力したいという思いから、 「かまくら学」の取り組みを始めました。

 「かまくら学」とは、1年生の「総合的な学習の時間」を中心に実施され、「鎌倉」を学習の素材として豊かな教養を身に付けることを目標としています。

 鎌倉に関する講演会を開催して鎌倉に関する知識を深め、各自の研究テーマを設定し、 夏休みの予備調査や秋の「かまくら探索」などを通じて、1月に研究レポートを完成させます。 その成果は、講演会「もっと知ろう、世界遺産」の中で発表しています。

 また、鎌倉まつりパレードでの広報活動や世界遺産登録関連遺跡の草刈りや森の手入れなど、地域との協働に よるボランティア活動にも取り組んでいます。
 
   鎌倉のみどりを守り続ける
■---------------------------------------------------------------------■
   特定非営利活動法人 かまくら広町台峯の自然を守る会

会の趣旨を綴った井上ひさしさんの著書
会の趣旨を綴った井上ひさしさんの著書
 当会は平成10年10月に、特定非営利活動推進法が施行されたのに合わせ、劇作家井上ひさしさんを はじめ、30人の文化人の呼びかけで結成され、それ以来一貫して鎌倉の緑を守る活動をしています。
 呼びかけ設立人の井上ひさしさんは、「私は蝶々か」の一文を添えて、緑保全の活動を蝶々の 小さな翅の波動に例え、蝶々の大軍となって大きな緑の大嵐を起こしたいと訴えました。 その志は鎌倉三大緑地の広町、台峯の全面保全への尽力やその後の「ナショナル・トラスト」 運動となり、鎌倉の緑を守るために受け継がれています。

 理事長の大橋圭介さんは「武家の古都・鎌倉の自然環境と歴史的環境を保護してきたのは、 御谷騒動以来の市民活動です。私たちの続けている緑保全の運動は、鎌倉の世界遺産登録推進運動 そのものと考えています。今後も『ナショナル・トラスト』運動を根気強く続けていきます」と 語っていました。

お問い合わせは当会事務局
メールアドレス npokamakura@themis.ocn.ne.jp 電話/FAX 0467-31-4559


 

古都鎌倉の世界遺産登録って なに?

第25回 世界遺産を守る緩衝地帯(かんしょうちたい)

 世界遺産登録にあたって、構成資産の保護状況が重視されるのはもちろんですが、 それだけではなく、資産の景観や環境を保全するため、その周囲についても ある程度の利用制限が必要となります。このような資産の周囲に設定される 区域のことを、緩衝地帯(バッファーゾーン)といいます。

 緩衝地帯自体は世界遺産として登録される区域ではありませんが、構成資産の 環境や状況に応じて、建物の高さ規制などで適切に確保することが求められています。 鎌倉の場合、若宮大路周辺の市街地や、まちを取り囲む山や海の周りなどが 緩衝地帯となっています。具体的には、風致地区条例に基づく風致地区、景観法による 景観地区などが法令で守られることで、世界遺産登録に必要な緩衝帯としての要件が 満たされると考えています。

 このように、鎌倉ではこれまで適用されてきた制度が、世界遺産登録で求められる 緩衝地帯の水準を満たすものであることから、今回の世界遺産登録により、新たな 法規制が導入されることはありません。
 
News! the 世界遺産
第41回 文化財保護ポスター事業、最優秀賞決定!
たくさんのご応募ありがとうございました!

最優秀賞作品
最優秀賞作品
 神奈川県教育委員会と鎌倉市では、次代を担う子どもたちに文化財を守る心を 育んでもらうため、県内の中学生を対象に、「わたしたちの文化財」及び 「世界遺産登録をめざす武家の古都・鎌倉」をテーマとするポスターを 募集する事業を実施しています。

 今年度の「世界遺産登録を目指す武家の古都・鎌倉」部門には、 69 校から313作品の応募があり、平塚市立旭陵中学校3年の角田悠 (つのだ ゆう) さんの 「流鏑馬」が最優秀賞に選ばれました。

Event! the 世界遺産
第56回鎌倉まつり「鎌倉の世界遺産登録をめざして」
講演『「武家の古都・鎌倉」の今』と寺社特別拝観めぐり

 今回のメインテーマも「鎌倉の世界遺産登録をめざして」です。
今年も若宮大路のパレードに当推進協議会も参加します。
世界遺産候補地の特別拝観と講演会は当協議会主催行事です。
多数の皆様のご参加をお待ちしています。

 【 鎌倉まつり期間 】  平成25年4月14日(日)〜4月21日(日) (鎌倉市観光協会主催)
プログラム (1)14日(日) 若宮大路パレード
(2)15日(月)
   〜
  19日(金)
世界遺産候補地の寺社特別拝観めぐり(推進協議会主催)
昨年は覚園寺千躰地蔵堂・瑞泉寺仏殿・建長寺山門・回春院・禅居院・寿福寺仏殿・ 浄光明寺覚賢塔・極楽寺本堂などを特別拝観しました。今年も同規模の特別拝観を実施の予定。
(3) 20日(土)
  14時〜16時半
もっと知ろう、世界遺産」(推進協議会主催)
『武家の古都・鎌倉の今』高橋慎一朗さん(東京大学史料編纂所准教授)
ところ/きらら鎌倉(鎌倉生涯学習センター)ホール  定員/250名(先着順) 参加費/無料

※鎌倉市世界遺産登録推進担当による鎌倉の世界遺産についての解説と、今年度  「世界遺産登録に向けての中学生作文コンクール」受賞者の朗読、県立鎌倉高校の 生徒による「かまくら学」研究発表も予定しています。
    お問合わせ/上記のプログラムの詳細は、下記事務局へ。
    その他、鎌倉まつりの全般的なことは、鎌倉市観光協会 ( 0467-23-3050)まで。


EDITOR'S NOTE   編集後記

 ユネスコの世界遺産条約採択四十周年記念行事が京都で行われました。これに関連して、 文化庁の小林世界文化遺産室長が指摘されるように、登録の可否が決まるまでの鎌倉の役割は、 基本的には保全の取り組みの持続ですが、当面ガイダンス施設整備の課題などは着実に 進めていく必要があるようです。
 そして鎌倉の課題として、文化遺産行政を支えていくような埋蔵文化財調査・研究の ための鎌倉市の体制をさらに強化する必要があることも指摘されました。
 保全の取り組みなどは行政だけでは万全ではなく、市民の協力が不可欠です。
鎌倉の世界遺産登録には、まだまだ色々な問題がありそうですが、今まで鎌倉では 行政と市民が恊働で問題 の解決に努力してきました。
 そこに、この推進協議会の存在価値があります。より活発な活動をさらに続けていきたいものです。
広報部会長 内海恒雄          
 

鎌倉世界遺産登録インフォメーション&放送スケジュール

  • インターネット  ◆鎌倉世界遺産登録推進協議会HP  http://www.kamakura-wh.org/
  • FMラジオ    ◆鎌倉FM(82.8MHz) … 毎週金曜 19 : 10 〜 19 : 30 「鎌倉世界遺産への道」
  • ケーブルテレビ ◆JCN 鎌倉 … 毎週木曜 17 : 10 〜(当日再放送あり) 7 Days デイリー『一問一答!鎌倉検定の道』

鎌倉世界遺産登録推進協議会
事務局
 〒248-8686 鎌倉市御成町18-10 (鎌倉市世界遺産登録推進担当)
 Tel. 0467-61-3849  Fax. 0467-23-1085
 E-mail : sekaiisan@city.kamakura.kanagawa.jp


武家の古都・鎌倉ニュース  | 講演会・シンポジウム等一覧  | 古都・鎌倉世界遺産一覧  | 参加団体一覧


Copyright (C) 2012-2013 Kamakura World Heritage Inscription Promotion Council. All Rights Reserved.
本サイトの無断転載を禁じます。 お問合せは、ページトップの「問合せ先」から。