住んでよく、
訪れてよい鎌倉のまちづくり
第5回ワークショップ
実施報告書
主催 鎌倉世界遺産登録推進協議会
共催 鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会
住んでよく、訪れてよい鎌倉の
まちづくり
第5回ワークショップ実施報告書
2011年11月27日(日)
於 鎌倉市役所第4分庁舎811会議室
主催 鎌倉世界遺産登録推進協議会
共催 鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会
|
巻頭言
まちづくりをテーマと
したワークショップ
総括進行役 福澤健次
この巻頭文も5回目となった。さまざまな方が参加したこのワークショップの発言に対し、幾分くだけたもの言いで私の感想を述べさせていただこうと思う。
先ず、ゲストに迎えた建長寺の高井さんと井上蒲鉾店の牧田さんには大感謝を捧げたい。
高井さんは宗教界も八幡宮を先頭に鎌倉のまちづくりに意を注がなくては、と考え 「今日は社寺を代表してここにいる、要望苦情などを鎌倉中に媒介します」という開会挨拶をされ、精力的に各テーブルの議論に対応された。牧田さんは「世界遺産が機縁で、鎌倉のコミュニティが支えられていく」可能性を話され、交通問題やまちの姿、情報発信などに関し、鎌倉育ちの経営者が肌で感じた、的確で広く、行き届いた感想意見を述べてくださった。
意見シートを見ての感想
下のページから意見シートがあるが、市民サイドで鎌倉のまちづくりに係わってきた私が共感を覚えたのは、「やれることから実行する」、「路地が重要」、「ソフトによる対応」、「市は決断が必要」、「住み易さは重要」、「財源の確保」、「時間をかける事が必要」、「自ら心がけキレイにする」や「主体的にものを考える」姿勢、などの書き込みだった。
それに対し、以下は話合いに参加できなかった私の感想も役立てれば、と思い読んでいただきたいのだが、幾つか違和感を持ったものもあった。
一つは「地下化・高架化」などのインフラ整備。
10月に講演をしてくれたドナルド・キ―ン氏も言っていたが、鎌倉のような歴史の町では道を拡げる解決をしてはいけないと思う (22ページの図・1の鎌倉駅周辺拠点の市街地部分に関して、の話だが)。
そこでロードプライシング(一般通行車両への課金)やパーク&ライドなどソフト面での交通量抑制の手法に頼ろう、となってくる。
海・山・社寺などと共存する、東京などにない居住環境を持つ鎌倉の町を掘っくり返し、大土木工事で騒がせなくてよいように、県の交通体系も組み立て
られている。
関連するが、筑波研究学園都市というニュータウンが、車利用至上の時代に茨城県に作られた。私は実現後のアメニティ向上計画に携わったが、中央に広い一直線の長い歩行専用道がある。馬の脚にはよいが、日常的に人が歩くには長大すぎる。それに対して、鎌倉の路地は歩いて楽しい空間である。
大仏次郎のエッセイ、「路地礼讃」を読んでみるとよく頷けるであろう。
鎌倉駅周辺地域の交通路計画では、これまで形造られてきた道巾を基本的に尊重し、その中で車が動ける台数に車流入をコントロールしていく、とするしかない。もちろん細部の改良はする必要がある。車道を狭くして車をゆっくり走らせ歩道を拡げるなど、さまざまな工夫が要るであろう。速度制限を厳しく設定し自動車を低速で走らせる車道なら、自転車もそこを走ることができる。
西欧や米国では行政が広場などの地下に駐車場を整備し、オープンスペースの広場を作っている。
市街からの山の景観は、今回の鎌倉の世界遺産の場のためには重要である。若宮大路や長谷の駐車場は古都に合わないと言われることもあるが、山を見るためには貢献している。
駐車場の代りに隙間なくビルが立ち並ぶことを考えれば分かるだろうが、これらのお蔭で町中から山が身近に感じられる。商業地の土地を広く買い取り、地下駐車場をつくる費用は大変なものとなるので、公共的な整備は市の手に余る。税も払ってペイするオープンスペースなんて素晴らしいじゃない、という受取り方も出てくる。あくまで景観上の話だが。そこで市も要綱を作り周囲の緑化などを指導している。
そういうわけで、ロードプライシングを考えるにしても、駐車場オーナーと手を組み、これらの駐車場の場と働く人の手をうまく利用するきめ細かいシステムづくりが必要となってくる。補償をどうする?との疑問もあったが、投資を押さえ財政体質を改善しようとする市にとっては、公・民win‐winのそうした方策はありがたいだろう。そうして得られる収入は、この交通システムの維持や、緑・文化財の保全に当てられよう。
とても公共広場の増大には無理であろうが、鎌倉のまちは広狭の道のネットワークで構成されている伝統があるので、先述した「道の細部改良」などには使えるだろう。
それから、狭い道路容量でも平日に支障なく車が流れる時間の方が多いのだから、そうした時間は
貴重な道を従来通りに使えるようにすべきである。車
の利便を完全に断っては、今の時代高い代償を払うことになる。鎌倉への来訪に関しても、牧田さんが商業の立場から二、八月の来客数低下に工夫が必要、と述べていたが、狭い鎌倉の町では「時・空間に渡っての平準化」が必要、ということなのだろう。
鎌倉地域の歴史まちづくりに向けて
さて、さらにもう一つ感じたのは、まちづくりをテーマとするワークショップに出る際にも、皆さんはあまり市の都市マスタープランなどは知らずに来られるのだなぁ、ということである。
意見シートの中に「新と旧を分けて共存」とか、「対立させることで発展」とかの発言が記されていたが、前世紀末に策定された鎌倉の都市マスタープランの基本図・将来都市構造図では、歴史継承エリアの鎌倉駅周辺拠点と、広域的な商・業務・産業等の集積を生かす大船駅周辺拠点、新たに形成する新市街の深沢地域拠点とは、その役割分担が明確に決められ、計画されているのである。下のページの鎌倉まちづくり資料の図・1、2を見れば一目了然だが、古都鎌倉を囲む丘陵部は、天然の要害として有名だが、新旧市街地を明確に分けている。
締めの挨拶でも触れたが、新しく生まれる深沢新都市の駐車容量を、鎌倉地域のパーク&ライドやロードプライシングに役立てるための打合せも始まっているという。
市の中心市街の高さ制限15mとか、市域の5割以上を占める風致地区の高さ8m以下・2割緑化の規定など、欧米水準から見ればバッファゾーンの規制としては厳しく、国際専門家会議でも問題無かろうとなった。もちろん色彩コントロールの規定などもある。
Eテーブルなどで論じられていたのは、歴史的空間を保って行くために、今のまちづくり条例なども生ぬるいという市民意見だった。
日本の都市計画の基本は用途地域・容積規定や空地率・高さ規制などのコントロールによるので、「街をゾーン分けした上で各論の議論が必要」という意見があったが、一応そのようにはなっている。
だが、この地区にはマンションを建てさせない、というような一般的建築規制はないので、身近な所に開発の話が起きると市民は反対運動をしなければならなくなる。
実はそうした規制をかける都市計画なども、地区の大方の人が望めばできるのである。細分化がよく問
題になるが、鎌倉山では自主まちづくり計画で宅地の最小面積を200平方メートルと定めている。
市街部に高さ15mの規制をかける景観地区を決めようとした時には、北鎌倉ではそれでも高すぎるとして、地権者たちが12mに引き下げる要望を出した。都市計画法の地区計画や、市のまちづくり条例の自主まちづくり計画制度、景観条例の景観形成地区制度で、そこに住む人々が望むように計画すれば、迷惑な開発計画を無くすことができる。
「街をゾーンに分け各論が要る」という意見は、こうした地区の計画を考えた発言だったのかもしれない。多くの地区でそうした計画を作ろうとする動きは出るのだが中々実現に至らない。今度のようなワークショップには出ない、制限が少ない方が地価を高く保てる、自分の土地は思うように処分したい、などと考える人々が多く、総論賛成・各論反対となり、まとまらずに終わるのである。鎌倉のような町では、居住環境を高める規制の存在は決して地価減少につながるわけでもないのだが。
Fテーブルで話が出た、歴史まちづくり法による計画を作るにしても、大方の住民の同意が前提となるであろう。
以上のような状況を考えると、はじめに共感を感じた「住み易さが重要」とか、「自ら心がけキレイにする」、「主体的にものを考える姿勢」などが重要だ、と分かるであろう。まちづくりには財源の確保が重要だし、市民理解を得て望ましいまちを作って行くには、「時間をかける事が必要」なのである。そのために市民が語り合い色々な考えを知り、良識を磨くために、このようなワークショップは今後も必要、と言えそうである。
感想・報告の終りに、このワークショップを成立させてくれた全ての参加者にお礼を申し上げます。
また市長の代役を勤められた兵藤副市長、島田・比留間・征矢の皆さん、進行を受持ってくれた事務局職員や仲間の皆さんにも心から感謝を捧げます。
冒頭説明をする福澤進行役
テーブルA(交通問題)報告
テーブル進行役 山村みや子+澤尚之
Aテーブルは、住む人にも訪れる人にも良い鎌倉の交通環境はどうあるべきか、何を改善していけばいいのか、を話し合いました。世界遺産登録が実現した後を見据えて、あるいはそうならなかったとしても、次の世代に引き継ぐことのできる、人にも地球にも思いやりのある鎌倉の交通環境を、もう一度見直し体系化するために、私たちの提案が役立つことを期待しています。
■自己紹介
Aテーブルの参加者は、鎌倉市内在住者が5名、藤沢市と横浜市が1名ずつで合計7名。平成23年
11月19日に行われた鎌倉市主催のシンポジウム、「どうする!休日の鎌倉の交通渋滞」への参加者は7名中3名でした。まずはご自身のこれまでの鎌倉とのかかわりについて紹介してもらいました。
今泉台にお住まいのAさんは鎌倉ユネスコ協会で識字運動に取り組んでいて、「鎌倉ユネスコは日本のユネスコとは違う独自の立場をとっている」とコメント、前回第4回のワークショップにも参加されています。
市外から参加したBさんは、元警察官で江ノ電のセットバックやJRの地下化など警察官ならではの大胆なコメントから始まりました。
やはり市外のCさんは、個人的な鎌倉ガイドを10年以上続けています。神社仏閣を案内しながら経験した鎌倉の歩行空間の悪さを指摘しました。
西御門のDさんは鎌倉NPOセンターの副理事長を務め、風致保存会の会員です。住んでいる人に配慮した交通計画にすべきだと強調されました。
世界遺産登録推進協議会のEさんは、鎌倉は実行が伴わない都市だと指摘、世界遺産登録に市民の関心がないのは明確なメリットが示されないからだ、と協議会委員ならではのコメントで締めくくりました。
■ワークショップの進行
交通政策課の澤さんと進行役は事前の打ち合わせで、前半では鎌倉の交通問題の課題や意見を列挙してもらい、後半でAテーブルの総意を提案としてまとめることを確認しました。みなさんの発言シートを澤さんに手際よく整理してもらい、たいへん助かりました。
まず、竹内市長時代の平成8〜11年に「交通社会
実験」があり、環境手形などの市民参加の交通計画づくりが進められたが、市街地への車の乗り入れを課金により制限するロードプライシングは各界の意見の調整が図れずに実現しなかったことを、進行側から話し、平成16(2004)年に出版された高橋洋二、久保田尚著『鎌倉の交通社会実験』を紹介しました。ロードプライシングは事業者、市民、観光客に受け入れられるのか、導入可能性をみなさんと探りたいと思いました。また、24年春には交通政策研究会が発足することをお知らせしました。
事前にお二人のゲストと市の幹部のみなさんにはテーブルを循環していただくことになっていたので、早速高井さんがテーブルに座ってくださいました。
■高井宗務総長のコメント
高井さんからは「そもそも鎌倉は頼朝の時代から入りにくく作ってあるのだから、渋滞を解消するにはトンネルでも掘るのかと言いたい」、「大きな駐車場を市の外側につくると言う話があるが、渋滞は観光シーズンの土日だけだと肌で感じている」、「課金による中心市街地の渋滞を緩和する方策は紫陽花の咲く6月頃にまず実験してみるのがいい」、「市民や観光客が歩くのに狭くて危険な歩道があればお寺さんや学校と協力して、歩道の拡幅運動(お願い)の声をあげてみてはどうか」など、テーブル参加者の質問に対する的確な答えをいただきました。なお、これら貴重なご意見を中間発表では、全部をご披露できませんでした。
■課題・意見
前半で出された課題には、以上述べたほかに、藤沢市との連携が足りない、世界遺産登録のメリットが見えない、鎌倉の話はベールがかかってわかりにくい、商業者との話合いができていない、市民は交通道路網・公共交通にある程度満足している、車の進入がむずかしいのは交通施設の整備が足りないからだ、歩行者の安全が図られていない、などがありました。
これらに対する意見としては、提言するよりも実行、藤沢市や葉山町との連携を図る、来る人を拒まない、市民・歩行者の安全を守る、市民生活のしやすさを緑の保存とともに考える、インフラ整備では(1)江ノ電のセットバックやJRの地下化を検討、(2)県道・市道の一方通行化、ロードプライシングの試行、限定的(土日、時間制限)試行、道路歩道の構造的な問題は地域の協力を求める、レンタサイクルや人力車によい環境
の一方通行化、ロードプライシングの試行、限定的(土日、時間制限)試行、道路歩道の構造的な問題は地域の協力を求める、レンタサイクルや人力車によい環境をつくる、交通状況の積極的な情報発信、などがありました。
交通施策を実現するためには多くの場面で事業者の協力が欠かせません。これまでたくさんの場面で事業者と向かい合ってきた鎌倉市経営企画部の比留間次長からは、「このようなワークショップから意見を出し、大勢の人たちの理解を得ていくことがよい」、「事業者さんは目先の利益だけでなく将来の鎌倉に目をやり、不特定多数の利益を考えてもらいたい」、「景観形成のために高さ規制の計画を進める際には反対もあったが、話し合いの機会を持ち解決した」というコメントがありました。
■牧田社長のコメント
後半のまとめに入ったところで、牧田さんからAテーブルの提案につながる率直なコメントがありました。「車は確実に減っていくと思う、ロードプライシングはいまこそやるとよいと思うが、コインパーキング等の駐車場事業主への対応をどうるすか、きちんと考えなくてはならない。歩いて楽しい鎌倉を感じてもらうためには情報発信が重要だが、何をどのような媒体で発信するのか考える必要がある、交通に関するプロモーションが抜け落ちている」
■問題解決のための提案
「歩いて楽しむ鎌倉散策、歩行者にやさしいまちづくり」を交通施策の原則とすることに全員が賛成し、その実現のためには短期、長期目標を掲げて進めること、施策とプロモーション(情報発信)のバランスをとり、戦略的な視点で取り組んでいくこと、などを提案の骨子としました。
○短期的な事業(できることからやる、実行する)
1 限定的一方通行化を行う。関連事業として、歩行
者天国の可能な地区を探す。
2 限定的ロードプライシングの実験を行う。
3 パーク&(バス・レール)ライドを再整備する。
関連事業として市外での大型駐車場の整備、市内
駐車場事業者への対応 (減収分の保障、納得、規制か)を検討する。
○長期的な事業
1 インフラ整備 歩道の整備、拡幅。
2 JRや江ノ電、道路などの地下化・高架化の検討。
3 道路の拡幅。
○情報発信
鎌倉の交通問題を情報発信できていないと言う意
見が多数を占めた。市民全員が広告塔になり、市、近隣他市と一体感を持ち、とにかく情報発信を続けなくてはならない。インターネット、フェイスブック、ツィッター、携帯電話、スマートフォンなどの情報発信ツールを大いに利用する。
■まとめ
5回目のワークショップで初めて世界遺産登録の当事者側お二人の話を聞くことができ、登録への緊張感や臨場感が湧いてきました。生活の足をどう確保するかの交通政策がまちづくりの根幹だと私はずっと考えてきました。24年春に発足する交通政策研究会の活動を注視しながら、私も鎌倉の交通の今を伝え、「鎌倉においでの際には公共交通をご利用ください」と呼びかけます。そしてこれから一番大事なことは、“世界遺産登録のメリット”を多くの人が発信していくことではないでしょうか。 (山村みや子)
■補足意見・感想
テーブルでは、警察OB、観光ガイドといった、バラエティーに富んだ皆さんの、それぞれの視点からのご意見をいただき、活発な議論が行われました。
市民の方、観光客の方、双方にとって安全で円滑な交通環境を実現するという共通意識の中で、短期的目標と長期的展望について、山村さんを中心に整理し、具体的な結論を導くことができたと感じています。
参加者の皆さんの真剣な議論に圧倒されながらも、「鎌倉」について本気で考えて下さる皆さんとともに、大変貴重な経験をさせていただきました。
ありがとうございました。 (澤 尚之)
|
|
テーブルの話合いを進める 山村さん(左)と澤さん
|
高井さんを迎え話合うAテーブル
|
テーブルB(交通問題)報告
テーブル進行役 長谷川栄子+関沢勝也
第一部(参加者の顔ぶれと各意見)
Bテーブルは市内から5名、市外から1名の計6名の参加でした。
自己紹介がてら、手短かに交通問題についてのご意見を伺っていきました。
進行役からは、10月に市主催のシンポジウム「どうする!休日の鎌倉の交通渋滞」が実施されたこと、そこで提示された基本データなどを簡単に紹介しました。
自己紹介についての概略は下記の通りです。
○α氏(市内長谷在住);世界各地での海外駐在の経験から見ても、鎌倉が最も住みよい。一方、長谷の車と人の渋滞は甚だしく、危険で、世界遺産候補の町として恥ずかしい。世界中のプランナーの英知を集めて、長谷のまちづくりを進めるべきだ。
○β氏(市内大町在住);長年、東京への通勤をしてきたが、鎌倉はほっとできる町で、子育てに一番良い環境。この環境を守るために、便利にすることはマイナス。観光はもっと縮小していくべきで、そのための規制は必要。
○γ氏(市内玉縄在住);世界中からお客様をお迎えする立場から、玉縄地域を活用した道の駅やホテルもあるパーク&ライドによる新ルートを提案。アクションプランを早急に市民団体に拡大することで、世界遺産登録に備えるべきだ。
○δ氏(横浜市在住);鎌倉市民は、規制が厳しくなることは本意ではないのではないか。便利に暮らすために、地下にバイパスを通すなどの考え方もあるのでは。
○ε氏(市内岩瀬在住);大渋滞による危険性や公害は問題。海外駐在の経験からも、パーク&ライドが一番(ロンドンの事例も紹介)。小袋谷、材木座、大仏の3カ所の規制は必要。
○ζ氏(市内腰越在住);観光客がスムーズに動けるためにも、車をこれ以上入れるべきではない。そのためにパーク&ライドが一番。乗り捨て可能な自転車によるサイクリング環境や駐輪場の整備も進めるべきだ。
全員の意見が出揃った後、Bテーブルでは、鎌倉が最もいい時期は、実は車が完全に規制されている「正月」ではないか、との意見で盛り上がりました。
さらに、いかに規制しいくべきかを話し合う中に、牧田社長がテーブルに着かれたので、商業者とし
ての交通規制に対するご意見を伺いました。
○牧田社長;商業者の中にも、「車こそ」と「歩いてこそ」という両方の考え方がある。しかし最近は時代が代わり、若者の車離れも増えてきた。自分の考えとしては、鎌倉は「歩いてこそ」の町であり、そのためにロード・プライシングはいいと思う。
パーク&ライドは最初はうまくいかなかったが、時代が変わった今こそ、本当に必要な人が必要な時に乗れるきちっとしたシステムをつくれば、うまくいくのではないか
横浜の「ハマチャリ」事業のように、自転車の乗り捨てもできるとよい。スポンサー費用がかかるので、全国規模の企業などで導入を検討してくれるといいと思う。
さらにBテーブルでは、「鎌倉としての付加価値」の必要性や、それには、あえて「便利さを追求しない」ことの重要性へと話しが発展していきました。
この辺でテーブルに来られた高井宗務総長には、神社仏閣の交通問題意識や「便利さを追求しない」ことをどう思われるかの意見を伺いました。
○高井宗務総長;現在は交通問題を神社仏閣で考えるところまでいっていないが、拝観をしている社寺がそれについて考える機会は作ってもいいと思う。
便利さを追求するべきではないという考え方は面白く、世界遺産に立候補するくらいならば、必要な覚悟だと思う。
以前、「おもてなし」という言葉を鎌倉で流行らせようとしていたが、あらゆる人にどう対応していくべきかを充分に考えていかないと答えは出ない。
次にテーブルに来られた兵藤副市長には、テーブル内でのパーク&ライドの要望が高い旨をお伝えし、市の方針を伺いました。
○兵藤副市長;ミニバス、大型タクシー、乗り合いタクシーなどについては賛否両論あり、採算面の問題もあるため、今後の議論が大事だ。
由比ヶ浜の駐車場とフクちゃん号は、失敗であり税金の無駄遣いとの批判が大きい。
この副市長の発言を受けて、パーク&ライドには、それによるサービスと、規制や罰則、といった<メリットとペナルティ(あめとむち)>が必要、さらに、税
金を使うのではなく、市民ボランティアの参画を頼りにして欲しい、との意見が出されました。
中間発表では、これらの意見を紹介しました。
第二部(具体的な対応策の検討)
第一部で、安全・安心が確保された鎌倉らしさを求めていくことの重要性と、世界遺産の町として車の総量を減らすべきことが、総意として確認されました。第二部では、それに向けた具体的な対策を話し合いました。下記がその具体的な内容です。
<ハード面>
○車道を狭め、歩道を拡幅することで、車の速度を落とし、環境と歩行者の安全性をアップさせる。
(車道の地下化、2階レベルの歩道という案も出た)
○自転車のための環境整備。
<ソフト(システム)面>
○パーク&ライドとロード・プライシングの実施。
→土日は砦をつくり、時間やナンバーで規制を掛ける。(鎌倉ナンバーをつくる)
→砦は現在のメインの6カ所+さらに外部に広げ、他市との境界にもつくる。
→メリットとペナルティ(あめとむち)を与える。
土日はペナルティを大きくし、平日はメリットを大きくする。システムの検討や実施において必要となる人手など、市民ボランティアが力となる。
→外部から入る車から環境税を取る。
ガソリン車は規制し、電気自動車に対して優遇措置をとる。これらは、環境まちづくりに生かされる付加価値となる。
→住民はただにする、もしくは安くする。
→歩行者天国個所をつくる。
→関谷を新たなパーク&ライドの拠点とし、道の駅をつくる。
○自転車化を図る。
→乗り捨て自由な自転車のシステムの整備。
(電気式三輪車は、荷物も置けて安全性も高い。)
○商店−社寺−交通システムの連携を図る。
→そのための情報・意見交換が大事。
○情報発信の重要性。
→ウェブサイトでの情報発信。カーナビの活用。
最後に、世界遺産登録後の観光客のアジア化が予想される中、鎌倉の<シンガポール化>というキーワードも出てきました。<おもてなし>の重要性が確認される一方で、観光客のマナー悪化も懸念されるため、シンガポール並みに罰金など、ペナルティを課すことで、車の規制もマナーも徹底するべき、と
いう意見で、海外駐在経験者が多いテーブルならではの、外国の成功例から導き出されたキーワードでした。
第一部でまとまった「土日の‘正月化’」「便利さを追求しない」という意見も合わせると、鎌倉らしい安全・安心な町を目指すため、Bテーブルでは、来訪者にはきちっと規制を敷いていく一方で、住民は不便さを甘んじて受け、さらに市民ボランティアで協力していくという、覚悟がみなぎった総意で取りまとめられました。 (長谷川栄子)
補足意見・感想
Bテーブルでは、参加者が意見の集約を自分たちで行い、方向性に関しても概ね見出せたと思います。また具体策も多く出すことができて、何がこのまちに必要なことなのか、何が自分たちに出来ることなのか等、有益な話し合い行われたと感じました。
参加者は、鎌倉のためを最優先して考えていました。その結果、ハード面の利便性の向上は現状維持程度に留め、「おもてなし」の心を持ち、ソフト(手法)面による渋滞緩和に向けた対応を話し合いました。そのことから、交通需要管理については、現在の環境保全の考え方が浸透していることなどから、現代版のパーク&ライドの推進ができるのではないか、とまとまっていきました。
参加者の皆さんが、鎌倉について真摯に話合い、時間を共有できたことはとても有益だったと感じました。 (関沢勝也)
|
|
中間発表の長谷川さん(右)、関沢さん
|
兵藤副市長を迎え話合うBテーブル
|
テーブルC(情報センター)報告
テーブル進行役 横川啓+能登原秀実
参加者の顔ぶれ
Cテーブルは、男女が半々の総勢8人で、特徴としては平均年齢が他のテーブルより若干低い(あくまで見た目で)という点です。
○Aさん(女性):発掘しても、市民や観光客が見られるようになっていない。展示と学習のための博物館を至急つくる必要がある。
○Bさん(女性):自分で意見を持っているわけではないが、皆さんの話を聞いて世界遺産のことについて学びたいとの気持ちで参加した。
○Cさん(女性):一級建築士、大学で主にイタリアのフィレンツエにおける歴史的建造物を学ぶ。近代以降の鎌倉も興味がある。
○Dさん(男性):鎌倉市議会議員。市議会で世界遺産登録に伴う諸課題を質問しようと考えている。
○Eさん(男性):湘南工科大学で、鎌倉市と共同で世界遺産のホームページを担当している。技術者であり情報発信の手法が専門だが、コンテンツがほしい。現在、携帯を使った鎌倉の史跡紹介を研究中。
○Fさん(男性):世界を歩いてきた経験から、鎌倉の世界遺産登録には期待するものが大きい。情報の発信について考えを述べたい。
○能登原さん(女性):進行役。協議会に参加している。鎌倉FMで世界遺産の番組を担当。大学で日本中世史を学ぶ。
○横川・筆者(男性):進行役。鎌倉市の職員だが仕事は世界遺産とはまったく関係のない部署。このワークショップは第1回目から進行役を担当。
第1部 「何が求められているか〜何をしたいか〜ハード分野」
前半は、兵藤副市長から、世界遺産登録に当たって鎌倉市が文化庁から求められていることを説明していただき、参加者からは、それぞれの思いや施設の内容や規模、候補地などハード分野でのアイデアを語り合いました。
兵藤副市長:文化財の保護の体制では、発掘調査の迅速化、市の文化財部門の体制強化。ガイダンスセンターや文化財資料館、博物館の設置、などを要請されている。ガイダンスセンターは主に、小学生な
どの子どもたちに学んでもらう施設としたい。候補としては御成小学校の講堂。博物館の候補地は野村総合研究所の跡地。
参加者からの発言
(1)鎌倉の玄関口となる鎌倉駅構内に一定規模の案内所が必要である。(現状以上の物)
(2)きらら鎌倉(鎌倉生涯学習センター)を改装し、全館で世界遺産の案内をできないか。
(3)ガイダンスセンターは小学生、博物館は高校生、もっと専門的に研究したい大学生は文化財資料館(研究施設併設)というように、学ぶレベルに合わせた施設の内容とする。同時に、施設の場所は駅に近い施設は入門者レベル、遠い施設は専門的な施設とする。
(4)御成小学校講堂にガイダンスセンターを設置し、発掘した文化財の展示や歴史を学べる展示などを行う。
(5)御成小学校講堂に博物館ができないか。展示方法を考えればできるのではないか。
第2部 「情報発信の手法〜ソフト分野」
後半は、情報発信の内容や手法などソフト分野の議論を行いました。まず大学で情報発信手法を研究するEさんから、現在鎌倉市と共同で行っているインターネット上の情報発信などについて話していただきました。現在市との共同作業で世界遺産の公式ホームページを作っている。また別のプロジェクトで、作成中であるが、鎌倉市内を大きな博物館と見立てて、鎌倉フィールドミュージアムというコンテンツを作っている。本来は博物館のサブコンテンツとして考えていたが、先行して開発している。携帯端末を使って文化財などを紹介するシステムで、GPS(全地球測位システム)を使って、その場に行くとその史跡などの情報を表示するというものである。同時にバリアフリーマップも作成している。システムの専門家なので情報(コンテンツ)が欲しいと考えている。
この話に続いて、参加者から以下のような発言がありました。
(1)車椅子と歩む会がバリアフリーマップをつくっている。こういう既存の組織と結んでいくと良いものがで
きるのではないか。
(2)手話ガイドをスマートフォンで行うというサービスが始まる…民間会社が企画している。
(3)観光協会では9月からイヤホンで聞くコンテンツを実験している。これも民間会社が企画し、観光協会が協力し、実験的に展開している。
(4)発信する内容のもととなるものの提供をしてくれるところはないか。
(5)現在も人がガイドするボランティアガイドが活用されており、これからも重要だ。
(6)ネットの利点は双方向性、市民や訪問者の情報を集約することはできないか。
(7)個人が紹介する観光ルートやお寺自身が紹介するページなど、市民が作る、訪問者が作る鎌倉マップができないか。
(8)発信のもととなる情報を、既存の団体からネット等の事業者に橋渡しする組織が必要ではないか。そのために、行政と民間事業者、観光協会、各種市民団体などで、テーブルを同じくして協議する場が必要ではないか。
(9)市内にある石碑で、建立当時の認識では正しくても、その後の検証で変わってしまっているものがある。訂正するか、または、変わっていることを知らせることができないか。
(10)広報の内容として武家の古都のアピールがもっと必要だ。そのために、参加型の観光、例えば禅の修行を体験することなどがいいのではないか。
最後に個人的な感想ですが、情報の提供の手法が多岐にわたってきており、これらを整理する必要があるのではないかと感じました。特に、市民や市民団体が活発に活動している鎌倉市では、それらに蓄えられた情報資産を、どう有効に公開できるかが課題となるでしょう。(横川 啓)
補足意見・感想
鎌倉に博物館を作ろう!という動きは
もう何年にも渡って話し合われているが、実際にまだ出来ていない。
資金の問題、場所の問題、展示内容についても、まだまだ話し合わなければいけないと思うが、前向きに検討しつつ、その一歩が出せてないように思う。100%資金や場所が揃うことはないと
思うので、与えられた今の状況の中で実現すべく、その思い切りの一歩が必要だ、と思う。
また情報発信ツールが増えれば増えるほど、正しい情報を伝えていくことが大切になる。
東日本大震災の際は帰宅困難になってしまった観光客がいたが、津波の被害はなかった。しかし今後、想定されているような14.4mの大きな津波が押し寄せた際には、住民だけでなく、たまたま訪れた観光客が犠牲になってしまう危険がある。
こういう観光客に向けて『何処に避難すればいいか』という情報を伝えることも、海に面している観光地である鎌倉がしなければいけない情報提供である。
ろうあ者向けの手話ガイドにも防災マップを入れることを検討している。これからは歴史・文化などの観光情報と共に防災対策の情報も提供していく必要があると思う。 (能登原秀実)
|
|
最終報告 横川さん(右)と能登原さん
|
Cテーブルの話合い
|
テーブルD(情報センター、まちの姿)報告
テーブル進行役 大竹正芳+香山隆
このテーブルの参加者はみなさん鎌倉市民の方々で、主なテーマはまちの姿と情報センターについての二点でした。途中で比留間次長、兵藤副市長、高井総長からお話しをいただき、牧田社長には参加者の話し合いを聞いていただきました。
前半では現実化しつつある情報センター(世界遺産ガイダンスセンター)の構想が兵藤副市長から説明され、具体的に進展していることを実感しました。その中でも中世博物館構想との関係が注視されました。
それを受けて、情報センターなどの施設については平泉を例に挙げて、箱モノだけではなく、ツールなどを含めた世界遺産に向けての情報の出し方とその本気度が充分ではないとの注文も出ました。
世界遺産に関する情報の出し方に関しては
「何を発するのか、リアルな情報を出さないといけない、どの辺から情報が出てくるのか」、「どういうことで登録されるのか、バラバラな発信を統合し目で分かるように発信するべきだ」、「マンパワーが大事なので深い情報よりもむしろ無関心な人に関心を持たせるべきである、学校教育の中での世界遺産登録のあり方を考えるべきである」、「基本的な外国語でweb検索できるようにすべき」、「日本の精神文化(武士道精神)のみなもと、発祥の地・鎌倉としての情報発信」などの意見が出ました。
参加者の話を聞いていて感じたのは、まだまだ鎌倉の世界遺産登録に向けての情報が浸透していないということでした。
それらを含めて後半では今後のまちづくりを中心に無理に一つの答えを導くのではなく、参加者それぞれに個人的な意見のまとめをしてもらいました。
その中では、鎌倉のまちづくりの姿として、やはり品性というものがとりあげられました。建築家の参加もあり、積極的で具体的な案も出されました。
「旧市街地と周辺地域を意識した用途地域の見直し」、「公共施設の整備と有効利用(例)大仏坂入口の子供遊園施設」、「公共の部分、市民意識を高めるためのステージにする。道路、駐車場の床に埋蔵文化財の形を描き(マンホールの模様蓋のように)表
わす」など。
もう一方で、「観光都市鎌倉として市民に説得力あるまちの姿とは何か、を考える必要を感じる」、「文化財保護→観光行政のすみ分け」、「宿泊施設の問題etc.観光と文化財、市民生活、商業、工業すべて良くなることに対立構造を作らない、意識を変えよう」、「観光の観念を変えなくてはいけない」、「このような機会を使って観光都市としての新しい政策が出てきて欲しい」との意見もありました。
さらに文化面では
「公共施設の整備と有効活用に関して、外国人向けの情報発信方法の改善(英語、スペイン語、仏語、中国語)」、「鎌倉の文化、祭ばやしの保存と発表の継続性」、「『御谷騒動記』で知られる鎌倉は日本トラスト運動発祥の地だが、これも侍精神の表れ」、「情報は博物館だけでなく公文書館等文化に必須の施設は多い」、「城塞都市として推進しては」、「古い市の建物を教育に使える施設として活かそう」、「お寺とのコミュニティーを地域の核として使おう」などと、多様な意見をいただきました。
今のあり方に対して、「部長以下何十名?今後の各員の行動計画を一覧にまとめてほしい、知りたい」、「良い意見、計画が出ても実現しない。行政の実行性を求めたい」などのキツイお言葉もありました。
ワークショップに参加される方は皆さん鎌倉の世界遺産登録に関して関心のある方ばかりで前向きな意見が多く、批判的な意見に関してもよりよくしたいという期待が込められているものと思いました。情報発信ということに関しては、興味を持っている人が鎌倉の情報を欲しているとき、満足いくものをいかに提供出来るかということにつきると思います。まず現在の段階で無関心、あるいは批判的な市民の方にこれから理解していただくことは体験上残念ながらほとんど不可能に近いと思います。そもそも根本的な部分で不信感を持っていられるのでどうしようもありません。
もう20年近く世界遺産登録が叫ばれ、今まで多くの人達が頑張ってきました。これでダメだというので
あれば、今までやってきた方々が無能だった、ということになってしまいます。鎌倉は極めて高い確率で世界遺産登録されると考えた方がよいでしょう。
大事なのは少しでも関心を持ってくれた人々の心を離さないことだと思います。今回の参加者の話を聞いてそのことを改めて感じました。そのためには情報センターも含めて、ハードもソフト面も行政のありようも利用しやすく、かつ、分かりやすくならなくてはならないと思います。
国外に関しては、以前シンポジウムで話をされた極楽寺在住のインドのアナンさんがワークショップの前に、「市内を地区ごとにブロック化し、それぞれ別の言語を勉強すれば英語圏外の人が訪ねても対応できる」と、ご意見を寄せられました。参考にご紹介しておきます。
|
|
テーブル議論を進める大竹さん(左)と香山さん
|
Dテーブルの話合いの中、立って説明する比留間次長
|
テーブルE(まちの姿)報告
テーブル進行役 高木規矩郎+牧れい花
Eテーブルは、男性5人、女性2人、全員鎌倉住民で、5人が初参加だった。うち二人は世界遺産候補地の荏柄天神社に近接する元治苑跡地でのマンション建設に反対する住民運動にかかわっていた。テーマ「まちの姿」が具体性を欠いていたので、テーマがまちづくりなのか、景観なのかと参加者の間で混乱が見られ、ワークショップのあり方、進め方、展開などについても反省すべきところも少なくなかった。初参加者が多く、全体では数の上でもかつてない規模のものになったことは、ワークショップの定着を示すものであるだけに、改めて開催の理念を考え直してみたい。
<前半の議論>
まず10月に鎌倉で行われた講演で日本文学研究家のドナルド・キーンさんが、「下品な町になってほしくない」と変わりゆく「武家の古都」に警告したことに関して、簡単な自己紹介とともにコメントを求めた。だが「総論なのか各論なのか設問の主旨がわからない」と最初から厳しい指摘を受けた。
「世界遺産登録によって町がどのようになるのかを話し合うべきではないか」と発言した研究所勤務の参加者は、「若者vs高齢者、住民vs観光客という鎌倉の対立軸を明確にした上で、お互いに発展させるべきだ」と提案した。
元治苑にかかわる二人の参加者は「鎌倉は遺構の上に暮らしているという意識が必要」、「武家の古都を守ろうと言うのなら破壊を阻止しなければならない」と発言していた。
若宮大路の美化に取り組む参加者は、「まちづくりということで鎌倉は野村総研研究棟を譲り受け、大船には清泉女学院、栄光学園を誘致したのではないか」として行政の政策の一貫性を疑問視した。
シンクタンクのコンサルタントという参加者は、「文化遺産と共存していける町」に鎌倉の特色を求めつつ、「史跡指定されたものだけが価値が
あるわけではないのに、共存するためには文化財の価値をどこかで線引きする必要があることが悩ましい」と発言した。
元治苑で起きていることを通して、「まちの姿」に思
いを馳せることができないかと思い、マンション問題を議題の一つに取り上げた。「埋蔵文化財の発掘調査が始まっているようだが、縄文時代の層にまでむやみに発掘するのはやめてもらいたい」、「跡地を更地のまま保存するのなら市や県などで買い上げるしかないのではないか」、「きちんとしたマスタープランを決めてかからないと開発業者の思い通りになりかねない」といった提案やコメントもあった。マンション業者の論理に対して住民側の常識的な判断を聞けたように思える。
<後半の議論>
休憩をはさんで後半の冒頭で鎌倉市のまちづくりの専門家に政策基盤になっているマスタープランの内容や元治苑に対する対応などについて解説してもらった。住民と行政がボールを投げ合って、とくに「まちの姿」のような生活に密接にからむ問題についてお互いの認識を深めていくことは重要である。ぜひ恒例化してもらいたい。
基本的な問題として提示されたのは財源問題だった。「深沢の国鉄跡地の商業地化で少しでも財源を考えるべきではないか」、さらに「研究学園都市としての旧市街地周辺のグリーンベルト地帯の開発構想」も聞かれた。「東海大学観光学部などの誘致も考えられる」と踏み込んだ意見だった。いずれにしても「まちの姿」は現状の鎌倉を大きく改変せざるを得ないような問題である。私としては世界遺産にかかわったことをきっかけに「まちの姿」に正面から向き合ってみたいとの思いもあった。
最終的には、世界遺産登録の意味を考えながらまちづくりを考えるという展開が思うように進んだとは思えない。参加者も不満を残したのではないかと思う。
しかし、最後の報告では世界遺産登録を目指す運動の中で「まちの姿」に触れているように思えた意見
をアトランダムに紹介した。
(1) 世界遺産と「まちの姿」の議論は方向が違う。
(2) 鎌倉の旧市街と新市街を明確に区別した上での各論の議論が必要である。
(3) 深沢地区を中心とした新市街地にマンモス駐車場を作って、観光客はバスで旧市街を回ることを考える。
(4) 旧市街地にはある程度の規制はやむを得ない。規制が嫌なら新市街地に移ることも考えられる。
(5) 歴史を生かすまちづくりをどのように実現するかが鎌倉の基本理念である。
反省点としては進行役が議論の方向を明確にするか、参加者に事前に具体的な説明をしておく必要があったように思う。ユネスコに推薦書を提出するという登録の現状を考えると、「まちの姿」のような具体性を欠く大きな問題設定ではなく、「元治苑とまちの姿」といった切り口も考えられたはずである。しかし参加者はそれぞれ頭の中にある「まちの姿」のイメージを提示しようとしていたように思える。進行役のとまどいもこうした参加者の心の優しさで救われた形である。(高木規矩郎)
<一つ気になった点>
「なぜ鎌倉を世界遺産にしなければならないのか?」という参加者からの問いに対して、参加者の中からはもちろん行政側からも、進行側からも、明確な答えを打ち出すことはできなかったこと。
これが、鎌倉の世界遺産登録が盛り上がらない原因とも考えられる。
日本の他のどの世界遺産とも異なり、「鎌倉にはこれ以上の集客は必要ない」という住民の基本スタンスの中で、住民も納得できる理由
やスローガンの必要性を感じた。
「世界遺産には興味がないが、まちづくりがテーマだから今回参加した」という参加者も複数いた。
そういう意味で今回は、参加者の裾野を広げることができたテーマだった。
しかし、せっかく「世界遺産」という国際的なフィールドで議論ができるのであれば、世界に向け鎌倉をどのようにアピールできるのか、というような議論を膨らませた上での「まちづくり議論」も今後期待したい。そうすることで鎌倉市民以外の、逗子市、横浜市、そして神奈川県が一緒になって推進できる土壌も生まれるのではないか。(牧れい花)
|
|
|
最終報告をする高木さん
|
中間発表する牧さん
|
島田部長、征矢課長も加わって話を進めるEテーブル
|
テーブルF(まちの姿)報告
テーブル進行役 宮田一雄+草場圭三
「まちの姿」をテーマにしたFテーブルは、進行役1名を含む計7名の参加者が鎌倉在住だった。ただし、世界遺産登録の構成遺産がある旧鎌倉・北鎌倉だけでなく、腰越や大船、玉縄などの広い範囲から参加されてきたので、世界遺産と「まちの姿」について、異なる視点からの複眼的検討ができ、短い時間内でも実りある議論が展開できた。
ひとりひとりお歳を確かめたわけではないが進行役2名が最若手だったようだ。その結果、ひたすら聞き役に終始できたことに加え、参加者の多くが地域の活動に携わり、「まちづくり」に関する豊富な知識と明確な視点を有していたこともあって、有意義な議論を楽しむことができた。
また前半部で井上蒲鉾の牧田知江子さん、後半は建長寺の高井正俊さんが参加され、議論が一段と活性化したことも、進行役としては大いに心強かった。
1 世界遺産登録の受け止め方 (前半の議論)
自己紹介の後、世界遺産登録に対する各地域の受け止め方、雰囲気といったものをうかがった。その中で出された意見は以下のようなものである。
「市民の意識は各地域とも低調。人任せ、他人ごとのような感じで冷めている」、「バッファゾーン内側でもそうした雰囲気がある」、「地域はそれぞれの足もとに重要な文化財を抱え、その固有の文化財を守ることに重点が置かれている。世界遺産と足もとの課題をつなげていく必要がある」、「市民の意識が低いという議論は推進協議会でも毎回出てくるが、なぜ低いのかという自問ができていない。協議会の参加メンバー自身の問題になっていないことにもしらけの原因がある」、「武家の古都というテーマは分るが、いまひとつピンとこない。これが武家ですという殺し文句がないように感じる」、「町並みが世界遺産にふさわしいものになっているとはいえない。統一感がない」、「歴史的文化遺産はあるが、高度成長期以降のまちづくりは文化的ではなかったのではないか。このままで世界遺産になっていいかという思いが残る」、「昭和40年代ごろにできた住宅地では、世界遺産について語られることがほとんどない。90%以上の住民は何か候補になっているな、といった程度の認識」、
「戦後にできた住宅街でも、家を手放すとき敷地を3つぐらいに分けて売るケースがある。必然的にミニ開発的な町が広がっていく。私の地区では、住民が分割して売らないという協定を結んでいる」、「私権の制限は難しい問題だが、必要性も感じる。」、「鎌倉の良さは緑だが、それがミニ開発で消されていっている。鎌倉の町をどうするかというコンセプトを市として明確にしていくべきだ」
ゲストの牧田さんからは「世界遺産登録では"武家の古都"と言っているが、実質は"寺社の町"である。建長寺や円覚寺、鶴岡八幡宮などを中心に町が造られ、その延長に今の町がある。かつては地域コミュニティが寺社とともにあったが、今は寺社を中心にしているという気持ちが薄くなってきている。世界遺産がある町に住むことの"誇り"をどこに持つかということが、登録への力になると思う。`世界遺産の町であれば、こうしていく必要がある’という方向に持っていくべきではないか」という指摘があった。
寺社をまちづくりの軸と考え、コミュニティの再構築を計ることの重要性には、他の参加者からも賛同意見が出た。
また、市民の関心については「鎌倉の市民は実は関心があり過ぎで、見方がシビアだから´ダメでしょう'という意見が出てくる。そのシビアな人たちを説得し、一旦納得してもらえば心強い味方になってくる」という意見も出され、後半につながっていった。
2 世界界遺産として誇れる町とは (後半の議論)
後半は次の3点を念頭に置いて議論を進めた。
1. 低いとされる関心を高めるにはどうしたらいいか。
2. どうすれば世界遺産として誇れる町になるのか。
3. 構成遺産を取り巻く環境をどう生かしていくか。
1.については、次のような意見が出された。
「推進協議会に参加する84団体が、それぞれの地元の問題だけでなく、世界遺産に向けても汗をかくことが必要」、「一人一人が何をすべきか、できるのか、したらいいか、地域、地域にあわせたかたちでそのビジョンを示し、世界遺産登録という鎌倉全体の課題につなげていくことが大切」、「鎌倉らしさをアピールする殺し文句がほしい」、「史跡と緑を結びつけたアピールを強めてほしい」、「鎌倉は日本が1992年に世界遺産条約に批准した当時から、京都や奈良などとともに暫定登録のリストに入っていた。観光・地域振興の切り札とて地元が運動し、暫定登録を果たした後発の地域とは、盛り上りが自ずと異なる」
2.では、世界遺産で自分の住む町がよくなるとは限らないという懐疑論も出た。世界遺産登録反対論の大きな論拠にもなっている指摘である。その懐疑論への対応も含め以下のような意見が聞かれた。「すでに年間の訪問者が1900
万人にも達しわが国有数の観光地としての地位を確立している。他の候補地とは実情が異なる。観光で大きく町が破壊される恐れは少ない」、「世界遺産条約には、そこに住む人が幸福でなければならないという内容の記載がある。住民が幸福に感じられない町に来ても、訪れた人はよかったとは思わない」、「住んでよく、訪れてよいという今回のテーマに即していえば、まちの姿は住んでよい、により重点が置かれるべきだ」
3.の世界遺産を取り巻く環境については、提案の趣旨があいまいだったこともあり、世界遺産の功罪をめぐる議論に移行する感があった。その中で「世界遺産というテーマがなければ、こういう議論はなかった。まちの姿を主体的に考えていく大きな議論が起きたことは重要」という指摘がなされた。
こうした議論に関連し、建長寺の高井宗務総長は「いかに引っ込んでいるお坊さんや神主さんでも、気づきはじめていると思いますよ」と述べ、神社仏閣があることで鎌倉が鎌倉らしくなっているとの観点から「そこにいる私たちが、自分たちのお寺の問題、神社の問題として、しっかり考えて行かなくてはいけない」と語った。(宮田一雄)
3 補足意見
ここで2の「前半議論」に対し宮田+草場の感想をすこし。
主に欧米の歴史的都市との対比で出てきた「町に統一感がない」との指摘は重要だが、鎌倉のように長い歴史の中でじっくり醸成されてきた町の将来を検討するには、多面的な議論も必要になる。作られた統一感よりもむしろ、多様な表情を持つ懐の深さを重視したいという意見もあるからだ。
さまざまな要素が鎌倉というモダンな歴史都市の魅力を形成していることを認識し、統一感が必要とされるところ、多様性が持つエネルギーが魅力になるところなど、各地域や通りの条件を踏まえた検討のあり方も考えられる。そこに住んでいたり、生業を営んでいる人たちが、多少の意見の衝突は織り込みつつ、世界遺産として誇りにできる町の姿を探っていく。そうした議論を進める際のキイ コンセプトの一つとして「統一感」を 巡る意見には注目しておきたい。
鎌倉の現実を直視して、「武家の古都」よりもむしろ、「寺社の町」であることを重視する考え方は、牧田さんの発言を軸に議論の重要なポイントとなった。「寺社の町」に関しては、幕府が存在した当時の鎌倉は当然、「武家の町」なのだが、政権都市は同時に最先端の文化や経済に関しても大きな吸引力を持つ。その結晶である寺社が長い歴史を経て現代に残っているからこそ、鎌倉は京都などと異なりいまなお「寺社の町」としての魅力を有している。
武家の古都を支えた産業や経済、物流の跡は、その後の長い年月の中でどう継承され、記憶やライフスタイルに残り、現代に息づいているのか。世界遺産登録後の「まちの姿」、という新たな伝統の創出に向け、そうした議論もまた今こそ積み重ねていきたい。
4 まとめ (宮田+草場)
鎌倉に住む人たちが世界遺産に冷ややか、という議論の背景として、住民には負の影響しかないのではないかという懐疑論が指摘された。たとえば登録の結果、多数の観光客が訪れ、守られるべき遺産がかえって破壊される。あるいは、ゴミが増え、緑が失われ、周辺地域を含め生活環境が悪化していく。実際に登録都市の中には、そうした例も見られる。
ただし、参加者の指摘にもあったが、鎌倉はすでに年間1900万人もの訪問者を受け入れており、「世界遺産登録」→「観光客急増」→「周辺環境の破壊」といった図式は考えにくい。むしろ、世界遺産登録が経済的な利益と結びつかないといった成熟した観光地としての見通しが、登録推進への熱意を妨げる理由の一つではないかとも考えられる。
その意味では、このワークショップで交通問題が取り上げられていることでも分るように、世界遺産登録は観光都市としての鎌倉が積年の課題を解決するための大きな機会になる、という肯定的評価も可能である。経済的側面からは、観光客受け入れの季節や曜日、地域の分散化をはかり、その結果、より魅力ある(住んでよく、訪れてよい)世界遺産都市という価値のさらなる創出に向け財源を確保することも、一つの方向性として考えられないだろうか。
議論の終盤は清掃という各論レベルの話題で盛り上ったが、そこから清潔な町。いつ、どこを歩いてもきれいな町といったイメージが浸透すれば、それは清掃の行き届いた寺社と共存する「まちの姿」を生み出すヒントにもなる。清掃という具体的な行動がこの「まちの姿」というビジョンの可視化につながっていったことは議論として示唆的だった。
|
Fテーブルの話会い:正面後方 宮田さん(右)と草場さん
|
意見等付箋の貼りこみシート整理
第4回報告書と同様に、各テーブルの意見などを記した付箋張込シ―トを箇条書きで整理し、テーブルでの発言の模様を写してみた。各テーブルの報告を読むと分かるが、このシートはテーブルでの発言をすべて写し取れているわけではない。
Aテーブル (主として交通問題を話合った)
「ソフトの整備」: ○やれることから実行する(短期)。○限定的な「一方通行化」、「歩行者天国」―可能な地区を探す。
○限定的に「ロードプライシング」実験。○パーク&ライドの再整備市外に大型駐車場、市内駐車場への補償?○「情報発信」 ツールを増やし多角的に行う。市民全員が広告塔。市―他市、一体感。「戦略的視点を持とう!」○歩いて楽しむ鎌倉散策、歩行者に優しい町づくり。(歩道の整備―不便さの美学)
「長期目標」 インフラの整備 地下化・高架架、道路拡幅―北鎌倉‐建長寺前は広げたい。○車は減っていくだろう
Bテーブル (主として交通問題を話合った)
○世界遺産なら覚悟が必要。○車の総量を減らす。○路地の重要性。○パーク&ライドや観光ルート。○商業者との関係がある。○正月の規制は土・日・祝日も必要かも。○フクちゃん号の利用×。○極論は必要。○情報発信が出来ていない。○インフラが良くない中でまちづくりはダメ。○抜け道はナビが×。○観光客の多さ。○NO制限、地下化。○交通量の見直し。
○インフラ整備に対する対応。○鎌倉へのあこがれ。○自転車の利用。○便利の追求はない!○交通安全は最低はやる。○長谷の渋滞。○規制は必要。○創意工夫。○ロードプライシングの時代?○付加価値。○土日の交通規制。○共通認識は課題。○海外の事例を取入れる。○現況は車社会?○個別で考えてはいけない。○おもてなし。○駐車料金等。○電柱を無くすのも良い。○考えることは必要。○「自転車交通」歩道が狭い中で難しいのでは。○「交通」バスの大きさ検討―車道、歩道狭い。○ソフト(システム)による対応。○市民目線の自転車交通、時間で考えては? ○タクシー乗り合い、大型等。
○大型駐車場の確保。○路上駐車は減らす。○パーク&ライド→現代的な情報の発信方法が必要。○鎌倉市決断が必要。○シンガポールの対応や取組みを参考に。○システム構築には皆手伝う! 「情報発信」○京都は上手。○ホテル(宿泊)が必要。○商業者にも得が必要。○ウエブの有効性。○カ―ナビの有効性。○海外からの観光客増加。○観光客は増えていいのか?○マナーが重要。「ゴミ←→人の数」○おもてなし。○市民の住み易さは重要。「付加価値」○環境税→車の進入時。鎌倉ナンバー、電気自動車OK、ガソリン車×。将来的には全て×。
Cテーブル (主として鎌倉情報の発信を話合った)
★情報公開 ○湘南工科大学、鎌倉フィールドミュージアム、GPSを使用。バリアフリーMAP。○手話ガイド、年内作成予定、スマホに対応。・市民が作るMAPが必要 ・正しい情報を伝えたい ・「武家」をもっとアピール ・行政と民間の話合いが必要 ・文化財保護の発信もしたい ・情報公開だけでなく「体験型」→訪問者が「禅」などを体験
★博物館、資料館(発掘・展示)、ガイダンスセンター ○御成小学校講堂 ・資料館、博物館を御成小講堂に作るには狭いのでは ・御成小講堂に早く博物館をopenしてほしい ・子どもたちにもよく知ってもらえるようにという意味も含め、ガイダンスセンターが必要 ○野村総研跡地 ・駅から遠いが興味ある人は行く ○きらら鎌倉 ・駅に近い所でガイダンスセンターができたらよい ○駅舎 ・あくまでガイドセンターは駅を建て替え、駅の近くで作りたい ・ガイドセンター、博物館も作ったらいいのでは。
Dテーブル (鎌倉情報の発信とまちの姿を話合った)
○情報発信の多元化。場所、規模を市はどう考えるのか?○日本の精神文化(武士道精神)のみなもと発祥の地、鎌倉情報の発信。○「町の姿」 公共施設の整備と有効利用、(例)大仏坂入口の子供遊園施設。○「城さい都市」として推進しては。
○観光都市鎌倉として、市民に説得力の有るまちの姿とは何かを考える必要を感じる。○用途地域の見直し、旧市街と周辺地域、宿泊施設の問題etc。○観光と文化財、市民生活、商業・工業、すべて良くなる事に対立構造を作らない様、意識を変えよう。○公共の部分を市民意識を高める為のステージにしよう。○道路、駐車場の床に埋蔵文化財の形を現わそう。○古い市の建物を教育に使える施設として活かしていこう。○お寺とのコミュニティーを地域の核として使おう。○良い意見が出ても実現しない、行政の実行性を求めたい。○(1)公共施設の整備と有効利用、(2)外国人向けの情報発信方法の改善(英語、ス
ペイン語、仏語、中国語)。○鎌倉文化 「祭ばやし」の保存と発表の継続性。○情報発信について・市内、市外(国内)、国外向けの発信方法。 ・紙媒体、web等の情報発信の役割分担。○情報発信、・市内向けの発信→エリア、ジェネレーションを越えはっきりとターゲット化、連携。「世界遺産とは何か?」教育現場への(次世代)アクション。 ・文化財保護―観光行政の住み分け?協生を選択するための情報発信 ・世界遺産登録推進活動のコスト・マンパワーの集約化→効率的な情報発信、情報センターの構築。○ネガティヴな意見などに間を置かず“反論”、“説得”、“ポジティヴな方向”を多数用意する。○鎌倉は日本トラスト運動発祥の地、「おやつ騒動記」を読んで、「いざカマクラ」を実感した。ナカミがスバラシイ、これもサムライ精神。○部長以下ン拾名?今後の各員の行動計画を一覧にまとめて下さい。知りたい、具体的な(計画をききたい)。
Eテーブル (主としてまちの姿を話合った)
「文化財保存とマンション問題―二階堂元治苑問題」 ○現在の「まちづくり条例」不十分。○自主まちづくり計画」があってもマンション問題。○市としての「マスタープラン」必要。○遺構の上に暮している、という意識。○古都保存法制定に描かれた絵が、30年経っても変化なし。○鎌倉市の青写真が必要。
「観光とまちづくり」 ○街全体の観光化→世界遺産と結び付かない。○「武家の古都・鎌倉」としての街づくり。○「若者と老人」、「住民と観光客」→両方を吸収。○将来の人口減の影響(観光客減、税収減)。○「新都市」をつくるという概念がない。○鎌倉の定量(数)化(どこで何人の人が動いてるか、何人来てるのか?など)。○対立させることで発展させる、新と旧をはっきり分けて共存。○和賀江嶋、さわるべき?さわらない??○共存するために、「価値」を線引きする難しさ。○研究学園都市構想&グリーンベルト。○JR所有地の最大活用。○街を「ゾーン分け」した上での各論の議論が必要。○財源の確保。○なぜ世界遺産なのか??目的を明確にすべき。○世界遺産登録は街づくりを考える好機。○「武家の古都」としてのストーリーが重要。
Fテーブル (主としてまちの姿を話合った)
○三大緑地を守る→歴史まち作りが次。→一つの方策が必要。→宅地開発(まちの姿ビジョンの策定)→世界に恥じないまちにしなくてはならない―世界(外国人)の視点では? ○寺社と地域のコミュニティ(昔はあった)→だんだん薄くなっている、―世界遺産になったら考える事。○反対の好例 大宰府天満宮(地域のコミュニティがある、寺社がコミュニティの中心になっている)。○世界遺産をどう捉える? 市民の意識低い(バッファゾーン内側の人も)。○好例、玉縄地域(築城500年)市民の意識づくりが大切。(浄明寺)町内会で語られない。○経済的問題(鎌倉は貧乏)→行政(国/県)の助成。○形を伝える→市民がどう伝えるか根底から分ってない。→殺し文句が必要(ex.大仏まで津波・・・)。
○地域5つそれぞれの抱える意識(ex.玉縄)→固有の文化財、再発見。→固有文化財、これを大切にできない。毎回出続ける疑問。自分たちへの疑問が解けない。何故?→推進協議会(84団体)が話合うことになっている。○都市計画と緑の保全の問題、→双方の融和した計画が必要。○私権の足かせ→国にもの申す法律が必要(歴史まちづくり法)10年スパンex.小田原市。20〜30年でも時間をかける事が必要。
(結論)
(1)関心をどう高めるか? →考える土壌があるのか?→鎌倉らしさ、魅力とは?(アピール方法 殺し文句を作る)○問題提起は簡単→一人一人が何をなすべきか?(そのビジョン)・寺社と一体になるべき(まずい)→現代の日本の源が残っていることを一緒に考える→もともと自分たちが持つ潜在能力に目覚めるべき―江戸時代の建長寺は「キレイ」がキ―ワードだった、宗教は日々の清浄行為が尊ばれる。武家の古都と神社仏閣との結びつき考慮→市民がまず取組むべきこと=(清掃、公衆トイレも・・・)。日本の源が残っている、これを絡めた市民活動をやったらどうか。→ネガティブな発想(税金etc.)、ポジティブな発想(ブータン国王の例)
(2)どう誇れる町をつくるか? →市民の潜在能力?→市民のための、市民による=キーワード。市民の関心は?→住んでよい、とは?―「住んでよし」ここに重点をおかないと市民は考え始めない→主体的にものを考えることがこれから必要。行政からの市民へのメッセージ?→行政(市長)が盛り上げるベースに欠ける。国が決めた事、仕方ないか?→リーダーシップの欠如。結論なし
(3)取り巻く環境をどう生かすか? →(平泉との比較)根本的な潜在能力の差を認識<―>地域(玉縄)も同、その潜在遺産。世界遺産の功罪のシミュレーションは?→予測:将来の市民のためにあるべき姿・・→京都、奈良の例:市民の心配はないと言われる。→啓蒙運動がもっと必要。