鎌倉地域以外にも多くの趣のある場所がある。
フォトライブラリーには大船観音寺も入っている。
また小町通りや御成通り、大船仲通りなどの商店
街、そして住宅地などにもそれぞれの味があり、
人の往来などに趣を見出す人もいる。人それ
ぞれに、感じる鎌倉の場の趣があるのだろう。
ワークショップ後できるだけ間を置かず、報告書をまとめようと作業を急いだが、年を越し平成25年の発行となってしまった。
今年の6月には鎌倉の世界遺産登録の結果も分かる。東北大震災が起きてからは、ほぼ2年が経つ。鎌倉の山は世界遺産の推薦に関し、大きな要素になったが、海の方は、ワークショップでは景観の他に、大津波対策が話題となった。
関東大震災後、後藤新平が東京改造に取り組んだが、大災後には思い切ったまちづくりが要請され、それは近代技術を駆使する思い切った大改造となる。ところが、今回は千年に一度来る災害に対する判断の問題である。しかも中世以来のサムライの本拠地が周囲に残ると、世界遺産に名乗りを上げている都市である。
巻頭文を書きつつ、何度となく伊達兄と議論を重ねた。その結果が総括役報告文である。
今回はそうしたまちづくり問題とともに、文化都市としての鎌倉の将来に関しても考え始めるきっかけを掴みたかった。鎌倉は蘭渓道隆が臨済禅をもたらした町で、その伝統は近代にまで受け継がれ、鈴木大拙や西田幾多郎が書斎を構えた所である。明治以後はキリスト教も盛んである。
東北大震災後にいち早く、神仏にキリスト教も加わり、三教合同の慰霊・復興祈願の催しが起り、継続している。これには宗教者だけでなく市民達も準備に係わった。どちらかと言えば今はアートに係る市民が多い町だが、いざという時には思想の力も遺伝子として伝えられている町だと思う。
そうした下地をもつ市民たちの催しに、うってつけの助言者お二人を迎えることができた。先生たちのコメントをよく読んでいただきたい。
報告でも触れたかったのだが一番大切なこと、いま何が最も必要で、どう取り組んでいくべきかを、投げかけていただいたと思う。
(福澤)
これまで福澤兄を手伝っての毎回の編集作業は、PCのMSWORDの操作指南役であった。さすが6回目ともなると、わたしの役割はほぼなくなったと思ったら、これが最終号であるらしい。
昨秋、宮城県沿岸部の津波被災の荒涼たる街を見てきた。東北の太平洋沿岸各地では今、平地部は居住禁止として台地上に新しい街をつくって移住というシナリオの復興街づくりが進む。
ハッと思いついた。実は鎌倉もそうなる日が確実にありうるのだ。富士山も噴火するかもしれない。そうなると登録されたとしても世界文化遺産はどうなるのだろう。
海底のトラフと聳え立つ活火山という自然遺産に対して、文化遺産はまったく無力か。座してその日を待つばかりか、それとも「世界文化遺産の事前復興」は可能なのか。
(伊達)
本年度4月に世界遺産登録推進担当に異動になり、今回が私にとって初めてのワークショップでした。
今回のワークショップを通し、鎌倉での市民運動が古都保存法制定の原動力となったように、鎌倉の魅力を後世まで守り伝えていきたいという強い思いが脈々と受け継がれていることを、直接テーブルでの意見交換には参加していないながらも肌で感じることができました。
また、多くのテーブルで、それを実現していくためには、市民と行政との「協働」が重要であるという意見が出ていたことも特徴の一つであると思います。
本報告書の中で、赤川先生に鎌倉市の協働事業についてお褒めの言葉をいただきましたが、それに甘んじず行政も努力を続けていかなければなりません。
今回のワークショップのように、自分の意見を発信することによって考えを整理することや、他の人の意見を聞いて視野を広げ、意見をまとめ共有していくことは、協働の第一歩であるとともに、まちづくりにもつながる作業だと言えるのではないでしょうか。
もう一つの成果として、今回の裏のテーマであった、「若者の参加」についても、全体に占める若者の人数は少なかったものの、参加していただいた多くの「若者」から、「勉強になった」「また参加したい」等の感想をいただき、ひとまず達成できたのではないかと思っています。世界遺産登録後も鎌倉のまちを後世に伝えていくためには、若い世代が真剣に鎌倉らしいまちづくりを考えていかなければならない時期にきているということを、ワークショップの中でそれぞれの世代の方が確認しあったように思います。
最後になりましたが、多くの方々のご協力でワークショップの開催・報告書の完成ができましたこと、この場をお借りして心から御礼申し上げます。
(箱崎)
世界遺産登録後の鎌倉を見据えて
―その趣と理―
ワークショップ実施報告書
2013年1月18日 発行
−発行者−
鎌倉世界遺産登録推進協議会
市民フォーラム実行委員会
−問い合せ先−
事務局:鎌倉市世界遺産登録推進担当
Tel. 0467-61-3849