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第6回 「世界遺産登録後の鎌倉を見据えて
 − その趣 (おもむき) と理 (ことわり) −」(平成24年)
目次 と 報告1頁

目次
巻頭言 ワークショップの総括報告 総括進行役 福澤健次 1頁
ワークショップ風景T   1頁
テーブルA1(山・海とまち)報告 テーブル進行役 山村みや子+岩城秀卓 2頁
テーブルA2(山・海とまち)報告   テーブル進行役 関沢勝也+金子智哉 2頁
テーブルB1(観光と住生活)報告 テーブル進行役 征矢剛一郎+鎌田宏司 2頁
テーブルB2(観光と住生活)報告 テーブル進行役 大江 尚+落合良恵 2頁
テーブルC(文化都市をめざす)報告 テーブル進行役 能登原秀実+草場圭三 2頁
社会関係資本としてのワークショップ アドヴァイザー 赤川 学 3頁
第6回ワークショップ「世界遺産登録後の鎌倉を見据えて−その趣と理−」に参加して アドヴァイザー 木下直之 3頁
ワークショップ風景U    3頁
鎌倉の趣を写す   4頁
ワークショップ参加者一覧     4頁
あとがき 福澤健次 伊達美徳 箱崎英里子 4頁
 
「世界遺産登録後の鎌倉を見据えて
 − その趣 (おもむき) と理 (ことわり) −」

第6回ワークショップ実施報告書

表紙

2012年11月18日(日)
  於 鎌倉市役所第4分庁舎2階会議室
主催 鎌倉世界遺産登録推進協議会
共催 鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会

  総括

 この報告では、今回のものと併せてこれまで六回催されたワークショップ全体に対する総括的な感想も含め、文を綴りたいと思う。
 ワークショップは、「世界遺産に鎌倉を」、「みんなで考える世界遺産おすすめルート」、「どう守る私たちの世界遺産」、「鎌倉の世界遺産登録へのまなざし」、「住んでよく、訪れてよい鎌倉のまちづくり」 とテーマを重ねて来て、今回の「鎌倉の趣(おもむき)と理(ことわり)」に関する話合いに至った。
 最初のワークショップでは、人々の鎌倉に関する感覚や意見がさまざまに語られ、その後の活動への貴重な蓄えが得られた。二回目では町を囲む自然環境へのみなの思いの深さを知ることができた。
 三回目にはレイヤーを読む掴み方も理解されて、歴史の町の文化資産を守るための学び、近隣の大切さなどが強調された。まなざしを語り合うころには、行政側の視点も丘陵部に注がれるようになり、市民の目線と一致してきた。鎌倉の価値や本質も掴めてきたように感じられた。
 そこで第五回では、「まちづくり」がテーマとなり、交通・情報・まちの姿などに関して、話が活発に進んだ。そこでは武家の古都というが、実質のコミュニティは寺社を核に作られてきた、という指摘も得ることができた。

さて、今回の意見シートを見て
 各テーブルの意見シートを読んで、私は下のような書き込みに共感した。
 「街と緑の調和・それぞれの家の手入れ」、「植物にとって良いまち・在来種を中心に考える」、「みどりを守るために団体をつなぐ」、「観光資源多い-鎌倉らしさ」、「新しいものと古いものが混在」、「作りものがあってはダメ」、「山・海はパッケージ/中世から変っていない」、「何が本物か/海・山、積み重なってきた歴史」、「まち・世界遺産、住んで居続ける」、「思い切った提案が必要」、「観光の基本は歩いて」、「鎌倉市、若い人が増えている」、「観光会社へのアピール」、「JR横須賀線の地下化はよくない」、「徒歩で用をすます、観光客が多く来る」、「昼は賑やか、夜は静か」、「車の入場を制限」、「各地区でタウンミーティング」、「宿泊施設を増やす」、「鎌倉に住むプライド、余裕」、「歴史・文化都市と経済都市が融合している鎌倉市は、独自な方法で考える必要がある」、「武家の古都に限らず多重な文化価値・その魅力を認識する」、「先を考え、次世代に定着する仕掛けづくり、可能なのは余裕がある人、若い人?空き家に若い世代に入ってもらう」、「国宝館→事業仕分け・・・図書館も・・・町の文化が失われていく」、「行政をムチ打ってきた住民運動の歴史」、「文学・民俗・・・分断され総合的になっていない」。

第六回ワークショップへの期待
 実のところ今回のワークショップでは、これまでの積み重ねの上に、これからの鎌倉の方向性が覗える考え方が出てくることを期待した。
 鎌倉のこの種の催しでは、どうしても平均年齢が高くなってしまうので、テーブル進行役のみなさんにも年齢制限を設け、若い陣容をそろえた。アドヴァイザーにも木下・赤川両先生という、文化・社会学の気鋭の方たちを招いた。
 秋の催しの多い日の開催で参加応募者も減ると思われたので、これまでコメンテーターやゲストに招いてきた識者にもテーブルに着いていただき、卓見が集まるような工夫もした。
 当日の参加者は予想通り例年より少なく、「文化都市」を論じるテーブルを一つにまとめ、五グループに分かれての話し合いとなった。
 参加者にアドヴァイザーの先生方も加わった熱い話し合いは、いつもながらの時間不足の結果となり、正直のところ消化不良のテーブルも多かったろうと思われる。
 「山・海とまち」のテーブルで、「思い切った提案が必要」とあったが、これは鎌倉の津波防災の話に関する提案だった。宮脇昭先生は常緑樹林の防潮堤を提唱している。国道134号に蓋をしてその上に緑の堤を築く、という考えはあり得る提案だと思えた。
 当日は「海が見えなくなってしまう」という反対もあったが、このような都市工学的な提案は、一応考えてみる必要があるので少々検討を加えてみたい。
 もとより国道の沖への移設も必要で、大土木工事になる。こうした千年に一度の津波をはね返すような大構想の実現は、鎌倉市単独ではとても無理で、次世代にわたり判断していくべきことである。
 ところで、昨年訪れた松島の町は前面の島々のおかげで被害が少なかった。私はむかし横浜市の金沢地先に海の公園を造るプロジェクトに参加し、「島でも作らなきゃ海の公園にならない」と言って、瓢箪から駒でいまの八景島ができた経験を持つ。
 この場合は横浜市が東京湾に広い埋立地を造る大事業の一環で一つの島を造ったのだが、鎌倉の前面に、減災のためだけに多くの島を造るのには、多大な費用がかかる。防潮も減災も大工事になり、海の景色は変わってしまう。いまは昔の景観が残ると言い、世界遺産に推薦されている町である。
 いまのところ千年に一度の大津波には、「逃げるにしかず」 が鎌倉市の減災の方針である。
 さてワークショップの報告は、大提案に偏り過ぎてはいけないので、先に挙げた書き込みに戻ろう。
 「昼は賑やか、夜は静か」、「入車の制限」、「各地区でタウンミーティング」、「宿泊施設を増やす」などに、ソフトな手法で歴史の町を生かして行こうという思いが見られ、今後の鎌倉のあり方のヒントになると思われる。タウンミーティングを各地で重ねていけば、地区ごとのまちの姿も見えてきて、最後の評で赤川先生が話されたソーシャル・キャピタルの蓄積になるに違いない。
 これに関しては、参加された宮田さんがワークショップ後に、「対話が生み出す社会資本」と題し、感想をビジネスアイ紙に載せてくださった。ワークショップの積み重ねも、鎌倉に社会資本をもたらしただろうという話で、(鎌倉で)時間の流れを少しゆるめ、待っているのもまた、悪いことばかりではなさそうだ、と結ぶ温かい記事であった。
 こういう対話を重ねて行けば、観光も夜を賑やかにするばかりでなく、「昼は賑やかだが夜は静かな」歴史の町の宿泊を喜ぶ人々を増やす可能性も考えられるのではないだろうか。
 「宿泊施設を増やす」に関しては、十月に開かれた女性円卓会議で、住み手が無くなる和風家屋を生かした小さな宿が喜ばれている話があった。歴史都市・鎌倉を持続させていく智慧を感じた。この会議には、北鎌倉たからの庭やカジュアートスペースを主宰しさまざまな文化活動の場を提供している方達が参加して、そうした情報が伝えられた。

最終コメントを話す福澤進行役
 最終コメントを話す福澤進行役 
 今回のワークショップでは、AやBのテーブルに出る話も包含する文化都市の話もあり得る、という想いもありCテーブルを設けたのだが、やはり文化の範囲は広かった。時間に追われてしまったこともあり、文化都市をめざす鎌倉について、すべては語り切れなかったと痛感している。文化に関心のある人をたくさん集め、時間を十分に使える対話の場を用意することが必要であろう。しかし、今回のCテーブルの報告は、限定的な条件下で文化都市に向う貴重な示唆をいろいろと提供してくれた。
 また、文化資源学を専攻される木下教授が最後に話された、「鎌倉時代の小型馬を飼ってみたら」、という提案は新鮮であった。
 ワークショップ後のホッとタイムで一緒した協議会の卯月さんが、幼少時に木曽馬を飼っていた話をされ、先生も驚かれていた。

鎌倉の歴史まちづくりに向けて
 AテーブルやBテーブルからの報告も、話し合いの様子がよく伝わる報告となっている。書き込みで挙げた、「次世代に定着する仕掛けづくり、可能なのは余裕ある人、若い人」 ということで言えば、このワークショップの進行を担ってくれた諸君や女性円卓会議を盛り上げてくれた方たちに、まず期待したいと思う。Cテーブル報告によれば、上記書き込みは木下教授の発言を写したものであった。
 私の感想は、この六回のワークショップで、鎌倉のまちづくりに向けての知見を得るという、当初目標はほぼ叶えられた。
 ここでの成果は、始まったばかりの深沢の新市街づくりのガイドライン策定などにも、大いに役立つであろう。
 最後にワークショップを成立させてきた全参加者、先生方たち、市職員の皆さん、運営に携わった仲間のみなさんに、心からお礼を申し上げます。

 
ワークショップ風景Tタイトル
ワークショップ風景Tの1
 福澤進行役による全体説明 

      ワークショップ風景Tの2
                  A1からB2まで各テーブルの話し合い 

ワークショップ風景Tの3
                                 Cテーブルの話合い 

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